《音楽日々帖》美味しい音楽


フェスとライブを愛する音楽女子、稲葉智美が気になるディスクをご紹介!今回のテーマは『美味しい音楽』。

 なんといっても、食欲の秋!ということで、今月は食べ物にちなんだ音楽を紹介します。まずは、ハルコさんの『ゴマサバと夕顔と空心菜』。まるで夕飯の献立のようなタイトルは、ツアーメンバーを食材に例えて付けられたもの。ハルコさん自身は、好物の「ゴマサバ」だそう。どこか旅気分をまとったシティポップは、夏が終わっても都会の日常に戻りきれずフワフワしている「夏休みロス」にじんわり効きそうです。

 食べ物ジャケットで強烈だったのがバトルスの最新アルバム。パンケーキにホイップ付きフルーツに目玉焼きにベーコン。ううむ、見るからに胃もたれしそうですが、ジャンクフードって食べ始めるとやめられないんですよね。彼らの音楽にも、そんな中毒性があります。やみつきの秘密は、フレーズを反復させてつくるループ。ライブでは機材をずらりと並べ生でループをつくり、さらに音を重ねて曲を演奏します。その様子は調理の実演のようでもありますが、何種類もの音が同時並行で複雑に鳴っているので、レシピの解読はもはや不可能。神業を注視するもよし、ひたすら踊るもよし。生演奏のドラムもまた圧巻の破壊力です。


 最後に、ジャンクフード好きの方は、ぜひスペシャル アザーズの『PB』に収録されている「POTATO」を聴いてみてください。某ハンバーガーチェーン店のフライドポテトの出来上がりを知らせるメロディが使われ、曲が始まるとレゲエのリズムに乗って揚げたてのポテトの匂いが…。

HARCO『ゴマサバと夕顔と空心菜』

「シティポップ=都市生活者の音楽」を意識して制作された5年ぶりのフルアルバム。パルメザンチーズを連想させる「Snow on the Pasta」も収録。7月にはアナログ盤もリリースされた。

POLYSTAR RECORDS 2015

BATTLES『LA DI DA DI』

実験的な音楽を奏でるNYの3人組ポストロックバンドの、全編インストで構成された3rdアルバム。目を引くジャケットは、大学でデザインを専攻していたギタリストが手がけている。

BEAT RECORDS 2015

SPECIAL OTHERS『PB』

日本の4人組ジャムバンド、通称「スペアザ」の3rdアルバム。 2013年にインストバンドとして史上初めて武道館でワンマンライブを行い、2016年には結成10周年を迎えた。

ビクターエンターテイメント 2009


selection&text: 稲葉智美(いなば・ともみ)

ラジオDJとして活動するほか、BGM選曲やナレーションを手がける。フェスとライブを愛する音楽女子。愛してやまない秋の味覚は「すじこ」と「ひやおろし」

Twitter: @tommyjan15





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