成功者のインタビューなどで、「チャンスの女神には前髪しかないと言われているので、怖かったのですが、やってみました」といった話を聞くことがあります。不安なときに、そういう考えが後押しになることがありますよね。芸者時代のお客様の中でも、誰もやっていないことに、勇気を出して挑んで大成功した方は大勢います。しかし、この言葉は人をだますときにも使われることがあります。「後からゆっくり考えようなんて思っていたら、せっかくのいい話を逃すよ。なにせ、チャンスの女神は前髪しかないんだから」というふうに。そして、「今しかチャンスはない」と思い切った結果、大失敗をすることもあります。
チャンスの女神と聞いて、私がイメージするのは、ボッティチェリが描いた『ヴィーナスの誕生』のアフロディーテ。髪が豊かで長く、それがアイドルグループのように大勢いる感じです。しかもその女神が、ときには「疫病神」に見える仮装をすることもあるようなのです。
そう思うようになったのは、「道はひとつではなく、他にもあると思えば、ちゃんと見つかる」とか、「〝もうダメだと思ってからが始まり〞と考え直してみたら、すごくいい結果に結びついた」などと聞いたり、実際にそうした光景を目にしたことがあるから。
時代の流れが早いせいで、そのスピードについていくのに必死になることがあります。一度でもそこから遅れたり、波に乗りそこなったら、もう二度といい流れが来ないんじゃないかと不安になることもあります。でも、そう思ってしまったら、まだあちこちにあるはずのチャンスやいい波を見逃してしまうのです。「乗り遅れた」と焦るより、「今からでも大丈夫」と思う。もしこの一年、なにか後悔があったとしても、この先またチャンスはいっぱいくるから大丈夫! 女神は、女神にふさわしい髪型でいつも私たちのそばにいます。