text:千代里 illustration: Yu Fukagawa

必ずいいことにつながっている《お多福美人講座》


 「ピンチはチャンス」とはよく言われることですが、私は自分が苦しいときに、この言葉を素直に受け取れたことがありません。映画などで主人公が、絶体絶命で一発逆転するとスカッとしますが、自分が苦境にある最中には、「この状況のどこにチャンスがあるんだ」と腹が立ったり、ピンチをチャンスに変えられない自分に焦ってしまうのです。

 それでも、苦境をなんとかしのいで振り返ってみると、苦しかったときに培った経験が役に立ち、よいことにつながったと感じることが思いのほかたくさんあるのです。鮮やかにピンチを切り抜けられなくても、つらい状況から抜け出す手段がまるでないように思えても、そのときもがいたことは無駄にならずに、自分の血肉になっている。そう気づいてからは、「今はわからなくても、必ずこの出来事は最高に幸せなことにつながっている」と、考えるようにしています。すると、何も状況は変わっていなくても、焦りや不安が減って、少し気持ちがゆったりするのです。さらには、「この出来事を未来の豊かさにつなげるには、どう捉えたらいいのか」と考える余裕も出てきます。現実に向かう気持ちが変わることで、現実が少しずつ好転するのです。

 わらしべ長者は一本のわらから幸福にたどりつきました。「何が人を幸せにするのかなんてわからない。特定のものや条件が人を幸せにするわけじゃない。“こんなもの”と思えるようなものでも、目の前に現れたものを活かすことで事態は好転する」と思うと、苦しいときの励みになります。一見解決には関係なさそうなことが突破口になることも多いので、先が見えなくて何から手をつけていいかわからないときは、とにかく今目の前にあるものを大切にする。そして、苦しく感じる今このときも、この先の幸せにつながっていると信じて生きていきたいものです。

metro209_otafukubijin_20160206412.png





この記事をシェアする

LATEST POSTS