私たちの世代にとって、「女性が男性にご飯をよそう」というシーンは、テレビなどでも見慣れた光景です。とはいえ昨今は、そうした認識を疑問視する声も多くなりました。こういう話題になると思い浮かぶのが、高校時代に図書館で手に取った平安時代のお話。タイトルは思い出せないのですが、一夜をともに過ごすことになった男に、女が手ずから給仕するのを見て男が興ざめし、一気にその女を嫌いになったというものでした。当時、家事は下賤な者のすることで、いくら好きな男に対してであっても、高貴な女性が炊事をするのはタブーだったとか。人間は、時代が変わればあっけなく変わる常識に翻弄されるものだ、と強烈に感じたものでした。
私たちはいまも、「これがいい/悪い」など、いろんなジャッジをしながら生きています。でも、そのモノサシのほとんどは、時代や人によって変わるのです。
人目が気になって仕方ないときは、過去に誰かが、さも正しそうに、「絶対守るべきこと」として言った言葉に影響されていることがあります。でもね、そんなこと、言った当人は忘れていたり、自分でも守れてないってこと、大いにあると思いませんか(笑)。ジャッジだけを真剣に受け止めて、自分を縛ってしまうことはもったいないと思うのです。恋愛などで、「あの人が、甘えた女は嫌いって言ってたから、私はぜったい甘えない!」と誓っていたのに、次にその人がつきあったのは、ものすごく甘える女性だったなんて悲劇はよくあること。自分の素直な気持ちにしたがってダメならしょうがないとも思えますが、無理して自分を曲げたのに、相手のモノサシや世間の常識が変わって置いてけぼりになってはたまりません。世の中の変化が激しいいま、誰かのジャッジではなく、自分の気持ちに向きあい、答えを出すことが大切だと感じています。