photo: Naoyuki Obayashi styling: Dai Ishii hair&make-up: Masaki Takahashi text: Eri Watanabe (EATer)

仲野太賀《プロフェッショナルの肖像「PRO-FILE」》


一人の男の人生を「叫び」で表した作品

 この秋、「第68回 サン・セバスティアン国際映画祭」で最優秀撮影賞を受賞した映画『泣く子はいねぇが』。物語の舞台は、秋田県男鹿市。主人公のたすくは、地元の伝統行事「ナマハゲ」に参加するも、泥酔して取り返しのつかない失態を犯してしまう。妻に愛想をつかされても、たすくは幸せな家庭を願うが、現実はそう甘いものではなかった…。大人になるとは? そんな問いがテーマとなる本作で、たすく役を演じるのは、俳優・仲野太賀。彼には、この役がどう映ったのだろうか。

 「たすくは大人でありながら、未熟な男です。けれど、僕自身も思い返せば『いつからが大人なんだろう』とか、『まだまだ子供だな』といったことを、10代後半からずっと思い続けてきたので、どこか共感が持てて、魅力を感じる役でした」

 たすくを囲む人々や寛容ではない社会は、彼のどうしようもなさをさらに引き立てる。しかし仲野は、たすくの魅力が伝わるように、意識的に演技に挑んだという。

 「たすくには、世間とのズレがあります。ただ、それを演じ過ぎると、見ている人から共感を得られない人間像になってしまう。そうならないように、彼の切実な部分は、ていねいに演じました」

 この物語で、重要な意味を持つのが「ナマハゲ」の叫び。仲野は、「ナマハゲ」のたすくを演じるとき、役者としての腕を試されたという。

 「役者にとって、顔こそが情報の多いパーツなので、『ナマハゲ』の面をした状態で、たすくの心情をどう表現するかが、この作品でいちばんの課題でした。傍から見れば、ただ叫んでいるだけに見えるかもしれない。けれど、たすくの人生を通すと、いろんな想いが詰まっている。この作品の、最大の見どころだと思います」

 大人になりきれないたすくは、過去のあやまちを乗り越え、どんな人生を進むのか。仲野が想いを込めた「叫び」を、劇場で見届けてほしい。

 

なかの たいが

1993年2月7日、東京都生まれ。2006年に俳優デビュー。映画『那須少年記』ではオーディションを経て主演に抜擢。その後、映画やドラマ、舞台など活躍の場を広げ、映画『桐島、部活やめるってよ』、TVドラマ『今日から俺は!!』など、数々の話題作に出演している。映画『すばらしき世界』、『あの頃。』が公開を待っている。


metro213_profile_01.jpg©2020「泣く子はいねぇが」製作委員会

『泣く子はいねぇが』

11月20日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
監督・脚本・編集:佐藤快磨
企画:是枝裕和
出演:仲野太賀/吉岡里帆/寛一郎/山中崇/余貴美子/柳葉敏郎 ほか
配給:バンダイナムコアーツ/スターサンズ
nakukohainega.com





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