photo: Yuki Morishima (D-CORD) styling: Kentaro Higaki (little friends) hair&make-up: Rumi Hirose text: Rie Tsukinaga

坂口健太郎《プロフェッショナルの肖像「PRO-FILE」》

コラム

役の混乱を解釈するおもしろさ

 東野圭吾のベストセラー小説を映画化した『人魚の眠る家』。事故で意識不明となった娘の瑞穂をめぐり、徐々に常軌を逸していく母と、苦悩する父を、篠原涼子と西島秀俊が熱演した本作。坂口健太郎が演じるのは、夫妻の娘・瑞穂に、最新技術を使った開発中の治療を施す若き研究者・星野だ。瑞穂の母・薫子から神のように崇められるうち、盲目的に研究へのめりこんでいく星野という複雑な役を、どのように演じたのか。

 「星野の感情の変化を理解するのは大変だったけれど、その混乱を解釈するのがおもしろくもありました。薫子にとって、星野は全能の神様のような存在だっただろうけど、星野にとっての薫子さんも、自分に力を与えてくれた存在なんですよね。お互いに欠けたものを補い合ううちに、どんどん現実が見えなくなっていったのかなと思います」

 星野役を演じるうえでの苦労を尋ねると、俳優として役に向かい合う秘訣を教えてくれた。

 「どんな役でも、自分と違う人間になるのは難しいこと。でも、100パーセント役になりきる必要はないのかなと思うんです。僕は脚本を読んでいる時間がすごく好きなんです。物語を理解するのはもちろん、何度も読むことで、星野という役が自分のどこかに存在し続ける。そこに意味があると思います」

 緊迫感あふれるドラマとは裏腹に、撮影現場では、主演のふたりや子役たちを中心に、終始やわらかい雰囲気が流れていたという。充実した撮影期間を経て、あらためて完成した映画を見た感想を聞いてみた。

 「いろんな感情がわいてくる映画でした。満たされた思いもあれば、胸がしめつけられたまま終わった部分もある。人間の生死をめぐる難しいテーマの映画ですが、必ずしもひとつのテーマにこだわらず、自由に見てほしいなと思います」

 

さかぐち けんたろう

1991年7月11日、東京都生まれ。

2010年よりモデル活動をスタートし、2014年に映画『シャンティデイズ365日、幸せな呼吸』で俳優デビュー。ドラマ、映画に多数出演。出演映画に『64-ロクヨン-前編/後編』『君と100回目の恋』『今夜、ロマンス劇場で』など


metro191-profile-01.jpgⒸ2018「人魚の眠る家」製作委員会

『人魚の眠る家』
11月16日(金)より全国順次公開
監督:堤幸彦
脚本:篠﨑絵里子
原作:東野圭吾
出演:篠原涼子/西島秀俊/坂口健太郎/川栄李奈/山口紗弥加/田中哲司/田中泯/松坂慶子ほか



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