街はどうあるべきなのだろう?これからの街づくりのヒントを探しに、サステナアクションスペシャルアンバサダーの遥渚(halu)さんが、麻布台ヒルズを訪れました。
KEYWORD 1
GREEN
見上げれば地上約330メートルの超高層タワー、その足元にはどこかなつかしさを感じる広大な緑地が広がっている。ここ麻布台ヒルズは、都市づくりを行う森ビルが手がけた再開発事業であり、ヒルズの未来系。コンセプトは「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」だ。
森ビルは1986年竣工のアークヒルズから始まり、愛宕グリーンヒルズ、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズなどで環境に配慮した街づくりを進めてきた。中でも緑化に力を入れている。当初は都市緑化やヒートアイランド現象の緩和を主眼として緑地面積の拡大が行われてきたが、2010年以降は、都市におけるネイチャーポジティブ(自然再興)を重要視し、緑の質を高め、生きものの住みかを増やすことも意識している。
「麻布台ヒルズのめざすところは都心の里山。生物多様性を担保しながら、人が自然と触れ合える空間をつくり、コミュニティーを育んでいきたいと考えています」と森ビル設計部の清水一史さんは語る。麻布台ヒルズの緑は、主に在来植生で構成され、その種類は約320種類にものぼるという。
「この土地には昔、どんな植物や生物が育っていたのか? そんなことも調査し、敷地内に植える植物を選定しています。落葉樹は葉や実が落ちるので手入れが大変です。ただ、この土地の記憶を継承し、ここに適した植生によって本来の自然の循環に倣い生物多様性を支え、人と自然の共生を目指したい、と計画を詰めました」(清水さん)
自然豊かな福井県で育った清水さんの夢は、「子どもの頃に体験したような、人と自然との密接な関係性を都心にもつくること」という。そのためには最新テクノロジーだけではなく、職人的な技術や生態系に学ぶことも重要だと考えている。
「水辺、くさはら、果樹、雑木林、芝生広場や生きもの…。子どもたちがそうした自然の魅力に惹き込まれて夢中で遊ぶ。そんな場所をこの街にいかにつくるかと常に議論していました。もちろん子どもだけでなく、麻布台ヒルズに関わる全ての方々にとっても、季節ごとに来たくなる、毎日出社したくなる、ふらっと散歩に出たくなる、そんな場所になってくれたらうれしいですね」
《NAVIGATOR》
ネイチャーポジティブを主眼に、
誰にとっても心地よい街づくりをめざしています
森ビル株式会社
設計部 外構・土木担当
兼 タウンマネジメント事業部
パークマネジメント推進グループ
清水一史さん
2016年入社。福井県敦賀市出身。入社当初より設計部所属。麻布台ヒルズではランドスケープデザイン、植栽管理などを担当。現在、樹木医の資格取得を目指し、自然から学ぶ姿勢を大切にしている。
超高層タワーと緑が同居する風景は圧巻!
環境デザインを学んでいた学生時代に空想した「都市の理想形」が、ここに実現されているかのようです
サステナアクション
スペシャルアンバサダー
遥渚(halu)さん
健康的な食のプロデュースや、ロー&ヴィーガンスイーツブランド「mari」にて商品企画・販売を行う。インスタグラムでは、日々のウェルネスでサステナブルなコト・モノを発信中。
@haluchn
WALK AROUND AZABUDAI HILLS
麻布台ヒルズの
多様な緑をめぐる
森JPタワーを背に中央広場を右手へ進むと、柑橘類やリンゴなど11種類の果樹が育っている。「大切に育てた木が実をつけてくれると、うれしいですよね」(清水さん)、「私も畑をやっているのでよくわかります」(遥渚さん)と、ブルーベリーの実をもいで味見※しながら語り合うお二人。季節によっては、ここで収穫した柚子を使ったクレープやソフトクリームなどがヒルズ内のキオスクで味わえる。保育園の子どもたちや地域の方々が、果樹や野菜の収穫に参加することもあるそう。「うっかり収穫しそびれた野菜が花を咲かせることもあるのですが、子どもたちは『はじめて見る!』と喜んでくれます。いろんな植物やそこに集まる生きものを見て、『これ何だろう?』と興味をもってもらえたらいいなと思います」(清水さん)
※取材のために特別に許可をいただいています
建物を高くすることで足元には広大な緑地空間を創出した麻布台ヒルズ。オフィスや商業施設のほか住宅やミュージアム、さらには予防医療センターなどが入る。
桜麻通りの街路樹には高木や低木からなる計34種の樹木で雑木林を再現。日々変化する自然の風景が楽しめる。
麻布台ヒルズ内にある果樹園や菜園では、親子向け体験活動プログラムなどの環境教育や啓発活動も開催。
個性的なデザインが際立つ低層建物の屋上にはチガヤなどの野草を植え、生きものたちの住みかを生み出した。
緑を増やし、多様性を育む
ヒルズが結ぶエコロジカルネットワーク
森ビルがこれまで手がけた再開発事業によって、12ヘクタールもの緑地が、都市部に創出された。これらの緑地は、皇居や芝公園など、周辺の大規模緑地間をつなぎ、生きものたちが移動する中継地や生息地になっている。アークヒルズでは4万本以上の樹木が植えられ、とくに約150本のソメイヨシノ並木は桜の名所として広く親しまれている。六本木ヒルズでは映画館の屋上に田んぼを設置。虎ノ門ヒルズ、愛宕グリーンヒルズなども含めたこれらヒルズは、皇居から芝公園に続く「南北の緑の軸」、赤坂御用地から浜離宮へと続く「東西の緑の軸」の交差点として、野鳥も見られる。アークヒルズ 仙石山森タワーと虎ノ門ヒルズは生物多様性に配慮した植栽計画によりJHEP認証※の最高ランク(AAA)を受けていることにも注目したい。
虎ノ門ヒルズ
アークヒルズ
六本木ヒルズ