日本の仏像の中で最も美しいとされる浄瑠璃寺(じょうるりじ・京都府木津川市)の「吉祥天立像」(きちじょうてんりゅうぞう・重要文化財)が11日まで、東京・日本橋室町の「三井記念美術館」で開催中の特別展「奈良西大寺展 叡尊と一門の名宝」で公開されています。
東京・日本橋室町の「三井記念美術館」で開催中の特別展「奈良西大寺展 叡尊と一門の名宝」 (写真・田中幸美)
吉祥天が東京で公開されるのは、数十年ぶりのことだそうです。「奈良西大寺展」では、彫刻や絵画、工芸品など総本山西大寺(奈良市)の寺宝を展示するとともに、西大寺と同じ真言律宗一門の寺院が所有する貴重な宝物が出品していますが、その一環として浄瑠璃寺の吉祥天立像が会期最終日までの6日間限定で展示されています。
三井記念美術館の清水眞澄館長によると、吉祥天は国を守る「護国」の仏であると同時に、罪を懺悔(さんげ)して福徳を授けるいわゆる「悔過」(けか)の本尊として祀られているため、奈良時代以降に盛んに信仰の対象になったそうです。その美しい姿は、薬師寺(奈良市)の「吉祥天女画像」とよく対比されます。
日本の仏像の中で最も美しいとされる浄瑠璃寺の「吉祥天立像」は、 白くふっくらとした体、装飾的な着衣、そして左右になびく帯など大変華麗な姿に表わされています
ここで、吉祥天立像のファッションに注目してみましょう。袖口にもう一幅付け加えた袖「はた袖」のついた衣に、少し広い袖の大袖、そして肘からラッパのように広がった筒袖を重ね着しています。今でいう「レイヤード」を取り入れるなんて、さすがに女性の仏様は、スタイリッシュです。ボトムは巻きスカートを1枚巻いています。
肩まで黒髪を下ろしていますが、頭の上にはまげを結っています。さらに頭に載せた宝冠には鳳凰(ほうおう)が乗っていて、清水館長によるとこうした仏像は例がないそうです。
宝冠に鳳凰が載った仏像は大変珍しく、他に例がないということです
頭と体幹部をひのきの一材で彫り出し、像表面には鮮やかな彩色が残っています。胸から下がっている「瓔珞」(ようらく)と呼ばれる飾りは体とは別の木材で作るなど手の込んだ細工になっています。豪華なようらくなどの宝飾品、装飾的な着衣といい、大変華麗な姿に表されています。
豪華なようらくなどの宝飾品が特徴です
吉祥天立像は1212(建暦2)年、本堂に安置されたと浄瑠璃寺の記録にあるので、鎌倉初期の作品となります。作者は不詳ですが、「その形からして興福寺や東大寺など奈良の仏師の系統と考えられています」と清水館長は話していました。
約800年の時を経て、東京へとやってきた吉祥天に会いに行きませんか。
◆特別展「奈良西大寺展 叡尊と一門の名宝」は、東京都中央区日本橋室町2ー1ー1三井本館7階の「三井記念美術館」で11日(日)まで。午前10時~午後5時(11日は午後4時30分まで)。一般1300円、大学・高校生800円。問い合わせは☎03・5777・8600(ハローダイヤル)。