能の衣装を現代の服で表現するとしたら…。そんな幽玄の美と伝統の世界を表現した服が「コムサ」ブランドなどでおなじみの大手アパレルメーカー「ファイブフォックス」(東京都渋谷区)から登場しました。
能装束をイメージした服を着用し、能面をつけたマネキンが目を引く「コムサ・ステージ銀座店」=東京・銀座 (写真・田中幸美)
ファイブフォックスの中でもハイエンドゾーンに位置する婦人服ブランド「ARTISAN」(アルチザン)、「BASILE28」(バジーレ28)、「β」(ベータ)の3ブランドはこのほど、日本の伝統芸能である能装束をモチーフにしたワンピースやスカート、Tシャツやプルオーバーなどを販売しています。いずれも東京・銀座の「コムサ・ステージ銀座店」でのみの取り扱いとなっています。
能舞台を意識したポップアップ展開をするコムサ・ステージ銀座店
モチーフにしているのは、ナデシコやブドウ、うろこなどの能装束の文様です。いずれもワンポイントにしたり、文様をちりばめたりと工夫を凝らしています。文様だけでなく、デザインも能を意識したものになっています。「大口」と呼ばれる半袴をイメージしたガウチョパンツや、薄い絹布で作られた広袖の上着「水衣」(みずごろも)をアレンジしたジャケットなどを取りそろえています。
「観世水摺箔」(かんぜみずすりはく) いずれもアルチザンでニットプルオーバー(4万2120円・税込み)、スカート(4万5360円・税込み)、ベルト(1万7280円・税込み) 《写真提供・ファイブフォック》
能装束をイメージしたアルチザンのベルト (1万8000円・税込み)
能装束の文様をモチーフにしたスカート
この3ブランドは、「日本の伝統美と西洋の調和が新しい感性を生み出す」をコンセプトにした服作りを目指しています。
そこで、昨年9月「文化力向上包括連携協定」を締結し、文化における地方創世の取り組みをともに行っている京都市の協力のもと、旧彦根藩井伊家に伝わる彦根城博物館所蔵の能装束の古い資料を参照することができました。そして、資料から抽出した文様をモチーフにした服を展開しました。
能装束の文様をワンポイントにしたTシャツ
アルチザンが13アイテム(うちベルトが2)、バジーレ28とベータがそれぞれ8アイテムの計29アイテムの展開です。テキスタイルも縫製も国内で行いました。
能装束をイメージした計29アイテムがそろっています
能の起源は、猿楽(申楽)にあるといわれます。1372年、猿楽の役者であった観阿弥・世阿弥親子が京都の醍醐寺で7日間の能興行を行ったことが記録として残っています。能は一言で言えば「幽玄の美」と「様式美」です。その装束は、平安の花鳥風月にとどまらず、幾何学模様には古代エジプトやギリシャなどの文様の影響を見ることができます。
幽玄の世界を思いをはせながら袖を通す服なんてステキですね!
(写真はすべて田中幸美)
◆「コムサ・ステージ銀座店」
東京都中央区銀座4-3-1並木館コムサステージ銀座、午前11時~午後9時。問い合わせは☎03・5159・6012まで。