ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家で、特異なエロティシズムで女性を描いたことで知られるルカス・クラーナハ(1472-1553年)の作品約60点と同時代の画家、クラーナハが影響を与えた近現代の画家の作品を含む計約120点を集めた「クラーナハ展-500年後の誘惑」が、台東区上野公園の国立西洋美術館で開催されています。
『蛇の紋章ともに―宮廷画家としてのクラーナハ』と『時代の相貌―肖像画家としてのクラーナハ』のコーナーでは、神聖ローマ帝国のザクセン選帝侯に仕えたクラ―ナハが、選帝侯や神聖ローマ皇帝カール5世などの政治家や人文主義者らを描いた肖像画に加え、キリスト教の物語や古代神話をテーマにした絵画や版画を展示しています。次の『グラフィズムの実験―版画家としてのクラーナハ』では、芸術を一種の経済活動とも考えていたとされる彼が重要視した版画に注目。大量生産が可能で、16世紀前半のドイツで絵画より大衆的だった版画という手法で、クラーナハが表現した荒々しくうねるような曲線やダイナミックな構図は観る者を引き付けます。
『時を超えるアンビヴァレンス―裸体表現の諸相』からが、本展の〝メーンコーナー〟。パブロ・ピカソなど20世紀のアーティストにも影響を与えた官能的な女性の裸体像―《ヴィーナス》、《アダムとイヴ(堕罪)》、ひとりの女性が裸で草むらに横たわっている《泉のニンフ》、全身を薄いヴェールに包まれた女性が暗闇のなかに立っている《正義の寓意》など―を紹介。さまざまなポーズをした細身の裸の美女たちが描かれた作品を堪能できます。『誘惑する絵―「女のちから」というテーマ系』で是非、じっくりと味わってほしいのが《不釣り合いなカップル》。あまりに非対称なふたりの表情から、このカップルの関係をいろいろ想像するのも楽しいでしょう。このコーナーでは、《ホロフェルネスの首を持つユディト》で無残に切断された男の頭部を差し出す女性 ユディトの冷たい視線も見逃せません。

ルカス・クラーナハ《正義の寓意》1537年、個人蔵

最後のコーナー『宗教改革の「顔」たち―ルターを超えて』では、宗教改革運動を主導したマルティン・ルターの肖像画などを展示。クラーナハは、親交の深かったルターを、ときに抗議する聖アウグスティヌス会修道士、またときに神学者として、さらにまた結婚したひとりの市民として描いています。これらの作品は、歴史の教科書などで見覚えのある人も多いはずです。
日本初となるクラーナハの大回顧展。クラーナハの作品が約500年の時を超えて放つ「誘惑」を体感できる展覧会です。2017年1月15日まで。

クラーナハ展-500年後の誘惑
会場:台東区上野公園7-7 国立西洋美術館
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜日は、午後8時まで)
休館日:月曜日[2017年1月2日(月)は開館]、2016年12月28日(水)~2017年1月1日(日)
観覧料:一般1600円/大学生1200円/高校生800円/中学生以下は無料