臨済禅師1150年、白隠禅師250年遠緯(えんき)を記念して東京・上野の東京国立博物館で10月18日から開催している「特別展 禅-心をかたちに-」の後期展示が7日から始まりました。禅の歴史を振り返りながら高僧の肖像や絵画、書などの禅宗美術の至宝に触れる展覧会ですが、前期とは大幅な展示替えを行い、まるで別の展覧会の様相です。7日の閉館後に行われた後期展示の内覧会に行きましたので、後期展示のみどころなどをご紹介します。
後期展示には、禅宗の初祖「達磨」に「慧可」(えか)が入門を請うために自分の左腕を切り落としてその覚悟を示す場面が描かれた「慧可断臀図」(えかだんぴず)2枚が登場しました。このうち白隠禅師(白隠慧鶴・はくいんえかく)の筆によるものは大分県臼杵市の見星寺(けんしょうじ)で新たに発見され、この展覧会が初公開となります。もう1点の雪舟筆による「慧可断臀図」は、雪舟最晩年のものですが、老いを感じさせないたぐいまれなる構成力と力強い筆致による作品です。
白隠禅師(白隠慧鶴・はくいんえかく)の筆による「慧可断臀図」はちょっとユーモラス
国宝 慧可断臂図 雪舟等楊筆 室町時代 明応5年(1496) 愛知・齊年寺蔵 11/8~11/27展示
さらに、日本の画家の中で最も人気が高く、今年生誕300年を迎えた伊藤若冲の作品を所蔵するアメリカのエツコ&ジョー・プライス夫妻の厚意で「プライスコレクション」の中から2点を特別出品しています。こちらも大きな見どころとなっています。
「鶏の画家」と異名を取る若冲が40歳代の初めのころに描かれた「旭日雄鶏図」は朝の到来を告げる雄鳥を描いたもので、「鷲図」は最晩年の自画像とも評されています。若冲は30歳代半ばから「若冲居士」と称して禅に帰依、剃髪して肉食妻帯を避けました。相国寺には代表作の「動植綵絵」(どうしょくさいえ)と「釈迦三尊像」を寄進し、鹿苑寺金閣には障壁画を描くなど臨済宗とは深い関係にありました。
伊藤若冲の作品を所蔵するアメリカのエツコ&ジョー・プライス夫妻の厚意でコレクションの中から2点を特別出品しています
後期展示の内覧会には臨済宗妙心寺派の妙心寺塔頭(たっちゅう)「龍雲寺」(りゅううんじ)の細川晋輔(しんほ)住職も出席しました。細川住職は、「白隠禅師の達磨が描かれているのは、私たち臨済宗のお坊さんにとっても大変名誉なことでございます。白隠、仙厓(義梵・せんがいぎぼん)の禅画は悩み苦しむ人たちが少しでも幸せになってほしいというやさしさだけで作られたものです」と指摘。そして海外などにも波及する昨今の禅ブームにも触れ、「Zから始まる言葉なので、耳障り・耳応えがいいのだともいわれます。何かを得るために禅があるのではなく、何かを捨てるために禅があるのではないでしょうか」と話していました。
また、チームラボが、禅における書画の1つ「円相」をモチーフに円や無限大が「空書」によって永遠に描かれ続けるデジタルアート作品「円相 無限相」を世界に先がけて初公開しました。チームラボの猪子寿之社長は、「空間に描くということで立体を再構築することをチームラボ設立以来ずっと取り組んできました」と話していました。
ユーモアを交えて禅について語る龍雲寺の細川晋輔住職 (写真・田中幸美)
◆「特別展 禅 心をかたちに」は東京都台東区上野公園13-9の「東京国立博物館」で11月27日(日)まで。月曜休館。問い合わせは☎03・5777・8600ハローダイヤルまで。
特別展禅の公式サイトは http://zen.exhn.jp/