映像作家として国際的に高い評価を受けているオランダの女性アーティスト フィオナ・タン氏が、原発事故後の福島の姿を象徴的にとらえた作品を展示する個展「Recent Works」が、港区六本木6丁目のWAKO WORKS OF ARTで開催されています。
メーンの展示は、タン氏が2013年に福島県の避難区域周辺を車で訪問して撮影した≪Ghost Dwellings Ⅲ≫の映像を縦2メートル、横3.6メートルのサイズで投影した作品。放射線測定器のアップで始まり、トンネルを抜けると、眼前には緑豊かな福島の山々が広がっていますが、人はいません。壊れた青いトラクターや白いバン、津波で流されたのか半壊の家の中でたたずむ乗用車。波と風の音、鳥の声、そして、放射線感知を知らせるガーガーという音だけが聞こえます。車は放射性物質の処理をしている作業員しか人間のいない街を移動し、避難区域との境で「止まって下さい」と書かれた赤い旗がクローズアップされ、作品は終了。会場では、5分30秒間の映像が、繰り返し上映されています。
この作品は、<Ghost Dwellings>三部作の最終作。タン氏はこれまで、財政破たんした米デトロイトとリーマンショックの影響で廃墟同然となったアイルランド南部コークの住宅街をテーマに2作品を制作しています。
今回は、フランス西部にあるアンジェ城にある中世期最大のタペストリー「黙示録のタペストリー(Tenture de l’Apocalypse)」を接写した作品≪Apocalypse≫も展示。美しいタペストリーの映像にオーバーラップして、新約聖書にあるヨハネの黙示録のテキスト(英語)が赤い文字で現れ、テレビの緊急速報や株価のティッカーを思わせる作品です。9月21日まで。入場無料。

Video still from Ghost Dwellings III, 2013–2014 Courtesy of WAKO WORKS OF ART

Video still from Apocalypse , 2014 Courtesy of WAKO WORKS OF ART
WAKO WORKS OF ART
住所:港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F
開廊時間:11:00~19:00
休廊日:日・月・祝日 夏季休廊:8月14日~22日