仏陀は歩く。穏やかな微笑をたたえて。
“ウオーキングブッダ”として世界的に親しまれているタイ・スコータイ時代の「仏陀遊行(ゆぎょう)像」。左足に重心をのせ、右のかかとをすっと浮かせている。締まった腰をわずかにひねり、薄衣をまとっている。仏法を説いて回っているとも、天から地上へ降りてくる姿だともいわれるが、日本の仏像とは違ったしなやかさが新鮮。タイの仏様らしく面長で、頭にラッサミーと呼ばれる火焔(かえん)形の飾りが付いている。東京国立博物館(東京都台東区)で開催中の「タイ~仏の国の輝き~」展で会える。
タイは仏教徒が国民の9割以上を占める「仏教国」で、仏教は人々の生活に寄り添い、歴代国王は仏法をもって統治することを理想としてきた。ちなみにタイで信仰されている仏教は、インドからスリランカを経て伝えられた上座仏教だ。大乗仏教が主流である日本では菩薩や天部など多様な仏像が存在するが、「上座仏教のタイではお釈迦様が多いです」と同館主任研究員の猪熊兼樹さん。