謡曲を舞うしとやかなたたずまいの女性を描いた「序の舞」。どこかで見たことがあるだろう。描いたのは美人画の名手、上村松園。重要文化財であり、切手の図柄にも採用された。近代日本画の最高傑作の一つとされる名作が、東京芸術大学大学美術館で開催中の企画展「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」で公開されている。
昭和11年制作の「序の舞」は、松園円熟期の傑作だ。華やかな振り袖をまとった若い女性。扇を持った右手をまっすぐ前方に伸ばした姿は毅然(きぜん)として優雅。静かで落ち着いているが、華がある。
序の舞とは、美女や老女の霊などがゆったりとしたテンポで舞う舞のこと。能に精通していた松園が、美しい型を描出したもので、自身も「私の作品の中でも力作であります」と述べる自信作だった。
松園は幼いときに父親を亡くし、母の手で育てられた。10代で絵の修業を始め、一貫して女性を描いた。
