年末恒例の「私の3冊」をお届けします。専門分野の異なる6人の読み巧者が選んだ、ベストセラー・ランキングには登場しない良書がずらり。お読みになったものはあったでしょうか。未読なら、年末年始の読書の参考にどうぞ。
■評論家・浅羽通明
〔1〕『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』管賀江留郎著 (洋泉社・2500円+税)
〔2〕『文学の読み方』さやわか著 (星海社新書・880円+税)
〔3〕『女官 明治宮中出仕の記』山川三千子著 (講談社学術文庫・1050円+税)
〔1〕拷問王と恐れられた紅林(くればやし)麻雄警部の怪物ぶりが何とも不気味。昭和25年の「二俣冤罪(えんざい)事件」。魔の手は、少年被告のみならず真実を証言した刑事やその家族の人生をも破壊した。この驚愕(きょうがく)の実話を素材に、認知バイアス論から時間概念の発生まで、話題は広汎に拡(ひろ)がる。「嫌ミス」(後味の悪いミステリー)など優に凌(しの)ぐ面白さに浸った後、読者は人間という謎を否応(いやおう)もなく考えるだろう。