illustration: Yurina Sato

#盛り男子が増殖中?《東京#CODE》


 年末が近づくと、急にイベントが多くなります。ブランドのパーティー、展覧会のレセプションなどなど。先日も国立競技場で《カルティエ》のトリニティ100周年を祝うパーティーがありました。オーバル型の競技場が赤く染まり、東京中のおしゃれ界隈の人々が集まって、うっとりする夜を過ごしました。

 そんな日々で、気づくことがあります。男子(とくに20代)のアップデートが半端ない、ということです。まず、身長が高い子が増えた。しかも、お肌がきれい。近づくといい香りがする、などです。とにかく、美しさが盛れている男子が増えているように感じます。そのようなイベントに集まるインフルエンサー男子に限らず、普段、地下鉄に乗っていても、男子の美化が止まらないな、と思うのです。

 まず、身長。「ねえ、最近の子って身長高くなった?」と聞くと、友人が「いや足元見て、かなり“盛れる”靴を履いているよ」と。視線の先を見たら、なんとしっかり厚底のブーツを履いている。スニーカーにしても、ダッドスニーカーや、最近人気のブランド《グラウンズ》も5㎝から7㎝くらいは余裕でヒールアップできちゃいます。以前、よく見かけたシークレットブーツの広告がありました。見た目にはわからないデザインで、当時はヒールがある靴をこっそり履いている、みたいな感覚でしたが、いまや隠すことなく、堂々とファッションに取り入れている、というわけです。

 “盛り”文化の発信源はギャルです。2000年代あたりから始まりました。メイク、ネイル、ヘア、ヒール、まつ毛、そして写真加工。“盛り”は女子の専売特許でした。過剰なくらいにかわいさとボリュームを求める、これぞ原宿KAWAIIの原点。メイクだって、身長だって、理想に近づけるのなら努力は惜しまない。それがギャルの信条です。

 ジェンダーの壁がとっくに崩壊しているいま。男子だって盛りたい、これは至極自然なこと。「だって、女子だけズルくないですか?」。ジェンダーレス系男子に言われました。彼のお肌はツルツルで、ヒゲも永久脱毛済み。爪の先には黒リボンのネイルアートも。「ファッションだって、絶対に女子のほうが選択肢が多くてうらやましい」と。たしかに、K-POPアイドルは身長も高く、お肌もツルツルで、メイクだって日常のこと。そこをベンチマークとするZ世代男子は、どんどん“きれい”を目指しているのです。

 これは若い男子に限りません。サラリーマン男性でも化粧水、パックは当たり前。身だしなみのために、ネイルサロンや眉サロンに通うのも、普通のことです。通勤靴だって、数センチ盛れちゃうデザインが人気なのだとか。美しさだけを求めるとルッキズムの沼に落ちてしまいますが、女子専有だった盛りカルチャーが、だれかのコンプレックスを解消させてくれるのだとしたら、幸せ度をアップする有効なツールとなります。

 「男のくせに」なんて言うと、ジェンダーバイアスと言われてしまう昨今。むしろ年長の人こそ、身だしなみとして肌や見た目を気にすることも必要なのでは、と思えます。「男として」とか「男らしさ」とか、「女のくせに」とか「女らしさ」とか。そこからの解放です。老いも若きも、みんながハッピーになれる“盛り”カルチャーを楽しみましょ。

THIS MONTH'S CODE

#《カルティエ》のトリニティ100周年を祝うパーティー

トリニティは《カルティエ》が誇るアイコンジュエリー。10月末に開催されたパーティーで、King Gnuの常田大希&俊太郎兄弟、宮川純による演奏など、“トリニティ(三位一体)”をテーマにした演出が素晴らしかった。

#《グラウンズ》

《ミキオサカベ》デザイナーの坂部三樹郎が手がけるフットウェアブランド。ボリュームのある厚底ソールが特徴。原宿の路面店はインバウンド客でも賑わう。

#シークレットブーツ

昭和のころの雑誌ではシークレットブーツの広告が定番で、だれにもバレないことが売りだった。





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