レストランやカフェで食事をし、最後のコーヒーにがっかりすることは多々あります。ぬるい(店の手抜き)、濁った雑味(欠点豆の混入が多い)、酸化した酸味(酸っぱい味でコーヒーの酸味とは違う)、枯れた草の味(生豆が古くなったことなどによる)など、理由はさまざまです。
これらは、お店がコーヒーの味に関心がないことによるのでしょうか? それとも、コーヒーの味そのものがわからないのでしょうか?
「コーヒー屋でないのでコーヒーならなんでもいい」「ランチにサービスでつけるので、安いコーヒーでいい」・・・。これでは、お客様に失礼だと思います。“最後の味”こそ、すべてを印象付けますので、大切にすべきでしょう。
いつの頃からか(2000年前後あたりでしょうか)、レストランは最後の飲み物として、紅茶やハーブティーの種類を増やすようになりました。コーヒーがおいしくないことも一因だったかもしれませんね。そのため、お客もコーヒー以外を注文することが多いようです。
かつては、イタリアンやフレンチでは、コーヒーがフィニッシュでした。古典的な考え方ですが、イタリアンやフレンチでは、料理に砂糖を使いませんので、最後のデザートで糖分を補い、コーヒーにも砂糖を入れて飲むのが普通だったからでしょう。
レストランの隣席で、ハーブティーなどという人に遭遇すると「なんで?」と素直になれない自分を発見してしまいます。
コーヒーに砂糖を入れなくなったのは、いつ頃からでしょうか。私のサラリーマン時代は、喫茶店がまだ元気なころで、「砂糖何杯いれます?」と恋人が聞いて入れてくれたものです。当時のコーヒーは苦いもので、まだこの苦みを、日本人は受容できていませんでした。
スティックシュガーは10gが一般的で、その後、砂糖離れが進み、5g、3gと小さくなってきています。私は、40年くらい前に、コーヒーに入れる砂糖の量を徐々に減らし、1カ月後には使わなくなりました。当時、90%程度の人は砂糖を使用していました。この頃、読者の皆さんは、まだ生まれていないかもしれませんね。
しかし、28年前に私が開業したときでも、まだ「砂糖入れる派」は「砂糖入れない派」より多く、60~70%程度を占めていて、喫茶にはグラニュー糖と角砂糖を常備しました。今では、「入れない派」がかなり増えたのではないでしょうか。
コーヒーの飲み方は、好みですので砂糖、ミルクは入れても入れなくてもよいと思います。堀口珈琲では、開店時にコーヒーカップのセッティングを下の写真のようにしました。

これは「入れない派」及び「利き手が右の方」を対象としたセッティング方法で、はじめからカップやスプーンは動かさなくても良いようにしてあります。このようなセッティングは,世界には例がなく、気づく人は「かなり不思議」に思ったようです。
コーヒーカップのセッティングは、お店が決めればよいのだと思います。今度、お店でコーヒーを飲むときに、チェックしてみてください。
そして、コーヒーにとってカップはとても重要です。コーヒーをおいしく味わうには、水色がわかる硬質の白磁、繊細な味がわかりやすい薄いものが理想です。ワイングラスは、品種により使い分けますが、コーヒーもカップにこだわりを持ちたいものです。
そのため、堀口珈琲では、有田の窯元(絵付けは伝統的に手書き)に依頼したものを使用してきました。絵柄も古典的な柄を現代風にアレンジしてもらい100種類くらいの新しい柄を制作してもらいました。とっておけば、素晴らしいコレクションになったと思います。
カップ好きですので、北欧のビンテージカップが上原店に160脚ほど(入手困難なものも多い)ディスプレイされています。興味のある方はご覧ください。世田谷店には、カイクリスチャンセン(デンマークのデザイナー)の椅子がありますので、探してみてください。
