コーヒーpapaのおいしい話⑨

グルメ, コラム

 コーヒーは世界中で愛されている飲み物で、個人的には最も嗜好性が高い飲料だと考えています。その主な理由を上げると、

1. 弱酸性で豊かな酸味がある

2. その酸は焙煎度により多様に変化する

3. 他の嗜好品にはないテクスチャー(滑らかさ、舌触り)がある(コーヒー以外はカカオにあります)

4. 生豆には1%前後のカフェインが含まれ、焙煎・抽出後も風味に影響を及ぼす

5. ショ糖、アミノ酸などが焙煎によるメイラード反応により複雑な風味を生み出す

 これらが他の飲料に比べ、習慣性の高い理由だと考えられます。

 また、コーヒーは、朝、昼、夜と時間を選ばす、家庭、コーヒーショップとさまざまな場所で楽しむことができます。さらには、ストレート以外に、砂糖、ミルク、お酒、スパイス、フルーツなど、色々なものと相性がよく、風味のバリエーションも豊かで、多様な楽しみ方があります。

 こうしてみると、同じ熱帯作物のカカオも気になりますね。例えば、メキシコは、コーヒー生産国で、カカオも生産されています。ですから、メキシコの人々は、コーヒーとともに、カカオもドリンクとして楽しんでいます。

カカオの木


 多くの一般家庭では日常的に、カカオ(焙煎したカカオ豆をグラインドして砂糖を混ぜたもので、これは煉る前ですのでまだチョコレートではありません)を購入。鍋に、このカカオと水を入れ沸騰させて飲んでいます。

焙煎したカカオ


 一方、消費国のフランスなどでは「ショコラショー」といってチョコレートを溶かし、ミルクと混ぜて飲む習慣もあり、マドレーヌ寺院前の「ラデュレ」などでご婦人が飲んでいるのを見かけます。

 カカオドリンクには果実の風味が残り、ブルーベリーやラズベリーなどの果実の味を強く感じます。エチオピアのイルガチェフェ、イエメン、ケニアなど最高峰のコーヒーの香味に匹敵する素晴らしい酸や果実感です。

 これに対し、チョコレートドリンクは、かすかに酸味は残りますが、甘く濃厚で深みのある味になります。したがって、生産国と消費国は同じカカオという原材料を使用しながら、その消費方法は異なり、異質な文化を生み出しているといえます。

 もちろん、生産国でもチョコレートを作っています(コロンビアなどのコーヒー生産国のチョコレートをよくいただきます)が、先進消費国のチョコレートとは品質差があります。

 ここ数年、ビーントゥーバーというカカオからチョコレートを作る店が増えています。コーヒーの自家焙煎と同じようにカカオの自家焙煎店です。これまで日本では、チョコレートは大手メーカー数十社でつくられていましたが、そこに変化が生まれました。

 チョコレートは製造工程が長く、設備資金が必要で参入が難しい業界でしたが、カカオの産地に行くショコラティエも増え、関心が増しています。10数年前のコーヒーの自家焙煎ブームに近いものを感じます。大量生産のものとは違う新鮮なカカオの風味が楽しめるからでしょう。

 しかし、“言うは易し、・・・”。日本にはカカオ用の小型焙煎機、粗削り機、皮とり機、粉砕機、メランジャー(ねる機械)などはなく、さまざまなもので代用しながら、試行錯誤しつつ、何とか店を立ち上げている状態です。また、カカオそのものの流通経路は長く寡占状態にあり、その品質を十分に理解できる人も多くはありません。

 2000年の初め、スぺシャルティコーヒーのムーブメントにより、生豆の品質に目が向けられ、自家焙煎店が増加しましたが、2010年に入り、チョコレート業界は原材料のカカオに目を向け始めたといえるのでしょう。

 個人レベルのビーントゥーバーの場合、チョコレートは非常に多くの工程を経ますので、生産量がかなり限定されます。またタブレットを作っても高い価格設定をしないと採算が合いません。さらに、それを使用して生チョコなどを作れば細菌の繁殖の可能性もあり、きちんとした品質管理が問われます。

 そこまで考えると、意外にハードルが高く、装置産業といわれるのも仕方ないとも思います。しかし、参入者が増加すれば、小型店用機械(現在はコーヒーの焙煎機を使用している事例が多く見られます)が開発され、発展の可能性は大きいと感じます。


 多くの嗜好品は、酸味が風味の基本となります。ワイン、ジュースなど果実由来のもの、コーラなどの清涼飲料水は、pH2~5程度の酸性です。逆にペットボトルのお茶などはややアルカリ性です。しかし、これらの飲料には脂質が含まれていません。ここにチョコレートとコーヒーの嗜好品としてのポイントの一部が隠されているのです。



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