映画、音楽、演劇、小説にアニメーション……日々新しい文化芸術が生まれる街で、そのつくり手たちは、どんなことを考えているのだろうか。今回話を伺ったのは、俳優やダンサーとして躍進を続ける坂口涼太郎さん。
“言葉の置き配”のように
そっと寄り添う朗読に耳を傾ける
初のエッセイ『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』が好評の坂口涼太郎さん。そのなかで綴られる「あきらめ活動」、通称「らめ活」という考え方にはっとさせられる。
「あきらめるって、明らかにすること。自分の今の状態や性格を知るきっかけになる。理想や憧れをちゃんとあきらめて、ありのままを受け入れることで見えてくることってあるんですよね」
それは俳優としての仕事にも通じている。朝ドラ「らんまん」で演じた役は当初“いじわるな分家の息子”という設定だったが、“家業は任せられない頼りないキャラクター”として人物像を組み立て直した。「脚本家などスタッフの方々が汲み取って、新たなお話を紡いでくれた。そのおかげでクランクアップ後に再登場して、素敵なシーンを演じることができました」
それもまた「自分の役割を果たす」という「らめ活」のひとつだと坂口さんは語る。「作品にとって自分ができることは、主人公をより魅力的に見せること。どういう言い方をしたら相手の心が動くか、お芝居がもっと豊かになるかを考え、登場人物それぞれが人生の主人公であるという思いが演技の軸になっています」
悩みがあるときや落ち込んでいるときは、本を読むことが多い。「今のこの状態を、どうしたらいいでしょうねというときに言葉が欲しくなる。本という媒体に、先輩たちの言葉で答えがあるような気がしていて」
気づけば自然と本屋へ足が向かう。「東京の本屋さんって、いい場所が多いですよね。お茶が飲めたり、コミュニティが生まれたり。そんな空間での読書って一方通行ではなく、受け取った人が感じたことを自由に発信したりと、双方向になっている気がします。気持ちを交換しあうって、新しい読書体験。おもしろいなと思います」
とはいえ、体調が悪かったり忙しかったりすると、本が読めないときもある。それでも言葉に触れていたい。そんな思いで、自著を坂口さん本人が朗読し、オーディオブックとして配信することにした。
踊っているかのような気持ちで書いたという軽快な文章は、オーディオブックでは寄り添ってくれているかのような、落ち着いたトーンで語られる。
「目で読むよりも温度感が直接伝わるので、ニュートラルに読むことを心がけました。いろいろな読書体験があっていいと思うんです。本が読めないときでも、“言葉の置き配”のように受け取ってもらえたらうれしいです」
□1990年、兵庫県出身。特技はピアノ弾き語り、ダンス、英語、短歌。連続テレビ小説をはじめ、映画、ドラマ、舞台で話題作に多数出演。朝ドラ5作目「風、薫る」に出演。俳優のほか、「ソノリオの音楽隊」(Eテレ)ではダンサー兼振付師として活躍するほか、シンガーソングライターとしても活動。

『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』
Amazonオーディブル版も配信中
坂口 涼太郎 (著、ナレーション)
発行:講談社
制作:Audible Studios(Audible版)
https://www.audible.co.jp/pd/B0GFSPSZ74