しゃべってもいいのに ぼくの一番のともだちはきょうもだまってる
思い入れのある映画の続編を観に行くときは、少し緊張する。『トイ・ストーリー』は私が小学生の頃に誕生した作品だ。最新作『5』の評判を耳にする前に確かめたくて、公開直後の週末に劇場へ向かった。
予約した隣の席には、小学校低学年ほどの男の子が座っていた。父親と、弟と一緒に見に来たらしい。足下のカバンには、ウッディのぬいぐるみがぶらさがっている。周囲を見渡すと小さな子どもが多く、もしかしたら上映中少し賑やかになるかもしれない。そんなことを考えているうちに、上映が始まった。
持ち主を想うおもちゃたちが駆け回る姿に、何度も胸が締め付けられ、気づけばやっぱり泣いてしまっていた。隣の少年からも静かに鼻をすする音が聞こえてきた。そのときになって初めて、上映中の客席がずっと静かだったことに気がついた。子どもたちも、そして私自身も、全員が物語に夢中だった。
エンドロールが終わり、館内に明かりが灯った瞬間、後ろの席から幼い声が響いた。「すっごくおもしろかった!」てらいのない、まっすぐなその子の声を聞いたとき、ちょっと泣いてしまった。本当に涙腺が緩い。
かつての私のように、今日ここにいた子どもたちにとっても、この物語は特別な存在になっていくのかもしれない。その幸福な出会いに立ち会えたことが、たまらなく嬉しかった。
岡本真帆(おかもと・まほ)
歌人・作家。1989年生まれ。高知県出身。2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』(ナナロク社)、2024年に第二歌集『あかるい花束』(ナナロク社)を刊行。最新刊に、自身の好きなものを短歌とエッセイで表現した『落雷と祝福』(朝日新聞出版)がある。