20周年記念公演「鱗人輪舞」で熱演するDAZZLEのメンバー=東京・池袋の「池袋あうるすぽっと」(写真・田中幸美)

《東池袋》結成20周年のダンスカンパニー「DAZZLE」が記念公演「鱗人輪舞」開催

ODEKAKE, Stage, INFORMATION, CULTURE

 ジャズやストリートなどさまざまなダンススタイルを融合し、ダークな世界観で独創的な作品を生み出してきた〝異形〟のダンスカンパニー「DAZZLE」(ダズル)の結成20周年記念公演「鱗人輪舞」(リンド・ロンド)が14日から東京・池袋の「池袋あうるすぽっと」で行われています。14日に行われたメディア向けのゲネプロ(本番同様に舞台上で行う最終リハーサル)と初演を取材しましたので、写真を中心に舞台をご紹介します。
 グループ名のDAZZLEは、「人を幻惑させるほど美しい」という意味です。まさに今回の舞台は名を体現するようなまばゆさ、美しさにあふれていました。数あるダンスグループの中で最も早くから舞台作品を発表してきたDAZZLEの真骨頂、20年の集大成ともいえる作品となっています。

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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから(写真・田中幸美)


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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから(写真・田中幸美)


 DAZZLEの作品には、映画やコミック、ゲーム、あるい日本の伝承などから着想を得たオリジナルの物語が存在します。主宰の長谷川達也さんが「20周年の節目には後世に残る不朽の名作となるような作品を生み出したい」と切望し、「不朽」「永遠」をキーワードにしたときたどり着いたのが「人魚」でした。
 「鱗人輪舞」のストーリーはこうです。海を守っていた美しい人魚をいけにえにしたことで、海はすっかり枯れ果てて大気は汚染し、人々がわずかな水を奪い合う殺伐とした暗黒のような世界が到来します。美しい人魚と恋に落ちたことで自らも人魚と化したリンド。何百年と生を繰り返すリンドはある日、人を信じることのできなくなった孤独な男、ロンドと出会います。リンドには、地下水脈を言い当てる特殊な能力があり、彼はその能力を利用して金もうけをしようとたくらむ人たちに翻弄されます。次第にリンドに心を開いていくロンド。2人は手を取り合って困難を乗り越えていきますが…。
 結末を実際に選ぶのが観客です。演劇ではよく使われる「マルチエンディング」という手法で、2通りある結末の中から1つを観客全員で選ぶことを求められます。是非劇場に足を運んで体験していただきたいので、ここでは詳しくは述べません。ちなみに16日昼までの計4回の公演では、仮に結末①とよぶものが3回、結末②が1回という結果となりました。
 物語は、外国資本などによる水源地の森林の買収問題に象徴されるような現在の日本が抱える水源問題を彷彿とさせます。そして、人魚といっても外国のマーメイドではなく、人魚の肉を食べて800歳まで生き延びたとされる「八百比丘尼」(やおびくに)という日本の伝承に着想を得ています。

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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。水脈を言い当てるリンド (写真・田中幸美)


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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。次第にリンドに心を開くロンド (写真・田中幸美)


 こうした物語をダンスで紡いでいきます。それは時に激しく、時に優しく、コンテンポラリーもジャズもストリートも、ヴォーギングも、そしてバレエの要素も内包したようなまさに「DAZZLE」とも呼ぶべきダンススタイルで見せます。さらに、布きれやスコップ、ランタンなどの小道具を効果的に駆使してのダンスは圧巻でした。また、効果的に楽曲にナレーションをかぶせ、ときに字幕を取り入れる手法も彼ら独特のものです。
 そして彼らのステージで欠かせないのが照明と音楽です。照明は、光と影のコントラストを効果的に使い、過剰な光を排除して常に引き算の美を具現化し、まさにDAZZLEの世界に厚みを持たせます。担当するのは、2006年からDAZZLEのほとんどすべての舞台を手がける女性照明デザイナー、矢鍋智子さん。ときにスクリーンに映像を投影させたり、水脈のシーンではきらめく光を点在させたり常に物語に寄り添う照明が印象的でした。
 そして音楽を担当するのは、NHK連続ドラマ小説(朝ドラ)「あさが来た」をはじめ、ドラマ「リーガルハイ」シリーズ(フジテレビ系)などで知られる今をときめく作曲家で楽曲プロデューサーの林ゆうきさん。高校・大学と男子新体操選手として活躍した経験から、自分や他の選手のために音楽作りを始め、オリジナルのサウンドトラックを作りたいと独学で作曲活動を始めた異色の音楽家です。楽曲の素晴らしさはもちろんのこと、登場人物の感情の起伏を見事に旋律で描いた曲はどれも心に突き刺さります。この舞台のために長短合わせなんと60曲以上を作曲したといいます。

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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。ランタンの光を効果的に使った演出が光ります (写真・田中幸美)


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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。水脈をスポットの光に見立てた効果的な照明が光ります (写真・田中幸美)


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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。ときにはスクリーンに映像を投影させます(写真・田中幸美)


 最後に特筆すべきことがあります。ラストに、奇天烈なダンスグループ「東京ゲゲゲイ」主宰の「MIKEY」こと牧宗孝さんの歌声に合わせて長谷川さんがソロで踊るシーンがあります。「MIKEYは心に響く特別な声の持ち主。情念のようなようなものを感じさせる」と長谷川さんのたっての願いで共演が実現しました。その声に心は震えます。

 そしてその歌声に合わせて踊る長谷川さんもまた、魂を込め、踊り終った瞬間に倒れ込むのではないかと思うくらい情念のこもった表現で、会場は固唾を飲んで見つめました。鳥肌が立ち、頬が涙を伝った人は多かったと思います。普段は理系出身らしく冷徹で緻密な演出プランをメモに描く長谷川さんですが、このソロからはそうした姿からは想像できない新たな一面を見せてくれました。
 ダンスなんてお金を払って観るほどの物ではないと考えている方がいたら、考えを改めていただきたい。もはやただのダンスではなく、アートであって彼らの人生そのものなのです。

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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。ラストでデュエットするリンドとロンド (写真・田中幸美)


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DAZZLE 結成20周年記念公演「鱗人輪舞」のステージから。MIKEYの歌に合わせて踊る長谷川達也さん (写真・田中幸美)


 ◆DAZZLE結成20周年記念公演「鱗人輪舞」(リント゛・ロンド)は、東京都豊島区東池袋4-5-2の「あうるすぽっと」(豊島区立舞台芸術交流センター)で、23日(日)まで。問い合わせと申し込みは☎0570・550・799キョードー東京まで。
DAZZLEオフィシャルHPは、http://www.dazzle-net.jp/




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