© Partizan Films- Studiocanal 2015

《映画でぶらぶら》味気ない現実を輝かせる、物語(フィクション)のふしぎな力


 少年たちのひと夏の冒険といえば、やはり『スタンド・バイ・ミー』を思い出す。はみ出しものの少年たちが旅を通して育む友情物語。だが『グッバイ、サマー』は、個性的な世界観が魅力のミシェル・ゴンドリーらしく、一筋縄ではいかない少年ロードムービーだ。

 ゴンドリーの映画では、いつもふしぎな小道具や生き物たちが登場し、現実にはありえない展開をやすやすと実現させる。フランスのベルサイユに暮らす少年ダニエルとテオが主人公の本作にも、楽しいデタラメさが溢れている。たとえば、ガラクタの山からつくりだす「動くログハウス」は、おもちゃの国の乗り物のよう。旅の途中に出会うのは、謎のアジア人ギャングや怪しい歯科医師など、まるでおとぎ話の悪役たちだ。メルヘンチックなのにどこかグロテスクなその旅は、ティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』も思わせる。

 『ビッグ・フィッシュ』は、いつも自分の話を大きく膨らませてばかりいる男の物語。巨人や魔女、怪物が登場する彼の話は人々を魅了家庭環境にあるが、彼は不満も言わずおどけてばかり。だがそんなテオの明るさが、妙に心に残る。

 嘘や虚構で彩らなければ、ときに現実に立ち向かえないこともある。そんなとき、人は物語(フィクション)を必要とするのだろう。突拍子もないホラ話によって味気ない現実が光り輝くのを、小説や映画のなかで、私たちは何度も目にしてきたはずだ。現実と虚構の間を行き来する『グッバイ、サマー』もまた、そんな輝く瞬間をもたらしてくれる。

車であり家でもある「動くログハウス」。ふたりがガラクタからつくりあげていくさまがとにかく楽しい。

This Month Movie

『グッバイ、サマー』

いつもクラスメイトからミクロ(チビ)とからかわれている、どこか中性的な見た目のダニエル。自作の自転車に乗り、体からガソリンの匂いを漂わせている風変わりな転校生テオ。意気投合したふたりは、夏休み、スクラップでつくった車(ログハウス)に乗って旅に出る。『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリーが、自身の少年時代をもとに描く14歳の少年たちのロードムービー。

YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ他で公開中
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:アンジュ・ダルジャン、テオフィル・バケ、オドレイ・トトゥ

旧作もcheck!

©2003 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ビッグ・フィッシュ』

いつもおとぎ話のような人生を人々に語るエドワード。彼に反発する息子ウィルは、本当の物語を教えてほしいと父に頼むが…。

監督:ティム・バートン
出演:ユアン・マクレガー

DVD&Blu-ray発売中 1410円(DVD)、2381円(BD)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

今月のはしごムービー

『神聖なる一族24人の娘たち』

ロシアの大自然で暮らす不思議な民族の説話をもとにした美しい娘たちの物語。そのさまはどこかエロティックでユーモラス

9月24日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて公開。
監督:アレクセイ・フェドルチェンコ
出演:ユーリア・アウグ、ヤーナ・エシポヴィッチ
http://24musume-movie.net/


『シーモアさんと、大人のための人生入門』

© 2015 Risk Love LLC

俳優イーサン・ホークが出会い、感銘を受けた84歳のピアノ教師シーモア。彼自身の言葉で語られる、ピアノと生きた半生とは?

10月1日(土)よりシネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほかにて公開。
監督:イーサン・ホーク
出演:シーモア・バーンスタイン、マイケル・キンメルマン
http://www.uplink.co.jp/seymour/


『歌声にのった少年』

© 2015 Idol Film Production Ltd/MBC FZ LLC /KeyFilm/September Film

ガザ地区に住む少年ムハンマドの夢は、姉との約束通り世界的歌手になること。まるでおとぎ話のような実話ストーリー

9月24日(土)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。
監督:ハニ・アブ・アサド
出演:タウフィーク・バルホーム
http://utagoe-shonen.com/


つきなが・りえ
編集者・ライター。〈映画酒場編集室〉名義で書籍、雑誌、映画パンフレットの編集・執筆を手がける。映画と酒の小雑誌『映画横丁』編集人。無性に旅に出たい今日この頃。





この記事をシェアする

LATEST POSTS