《映画でぶらぶら》女性監督たちが描き出す、自由を求める少女たちの姿

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 今月は、世界各国の期待の女性監督たちによる新作が目白押し。まだまだ少数派の女性監督だが、弱き立場だからこそ描きうるものもあるはずだ。

 ジョージア出身の女性監督とドイツ出身の男性監督が共同で手がけた『花咲くころ』を見ると、それがよくわかる。この物語は、一昨年に公開されたトルコ映画『裸足の季節』(こちらも女性監督の作品)とよく似ている。どちらの作品にも、監督自身の少女時代の体験が反映されており、封建的社会のなかで女性たちが受ける性差別や、10代の少女たちの結婚といった現実問題が描かれる。映画の根底にあるのは、女性であるとはどういうことか、というテーマ。

 『花咲くころ』の舞台は、内戦終結後間もない92年のジョージア。物資の不足から飢えや日常的な暴力が蔓延するなか、主人公のエカは、同級生の男子からの嫌がらせと、投獄中の父への複雑な感情で頭を悩ませている。アルコール依存症の父親をもつ親友のナティアも、家では居場所がない。まだ14歳だが、毎日配給の行列に並ぶなど、大人と同じ役割を求められるふたり。一方で、大人は古いしきたりで子どもたちを縛り付ける。

 ある日ナティアは、自分に思いをよせる青年から、自衛のためにと銃をプレゼントされる。だが同時に別の男からも結婚を迫られ、彼女の運命は大きく動きだす。自由奔放に見えたナティアだが、実際は彼女に選択権などないことがだんだんとわかってくる。

 やがて訪れた婚礼の場。ひとり不満げな顔をしたエカは、突然立ち上がり、会場の真ん中で踊りだす。自分の未来を決められるのは自分だけ。この体も、力も、すべては自分だけのもの。それなのになぜ自由に生きることが許されないのか。そう叫ぶかのように、エカは無心で踊り続ける。

 少女たちには、自由に笑い、歌い、踊り、叫び、走りだす権利がある。だがその声は、大人の横暴さと男たちの暴力によって退けられる。彼女たちが自由に生きるためには何が必要なのか。十分な知識か、すばらしい結婚相手か、あるいは力に対抗するための暴力か?

 答えは見つからない。でも自由への希望があるなら、それは少女たちの力強い肉体の中にこそある。エカの力強い踊りと眼差しは、そう私たちに教えてくれる。

「女性の自由」をテーマにした本作。同監督たちの最新作『マイ・ハピー・ファミリー』(Netflixオリジナル)も、『花咲くころ』と併せて見てほしい

This Month Movie『花咲くころ』 

 1992年春、ソ連から独立後間もないジョージア(グルジア)。首都トビリシでは、物資が不足し、まだ内戦時の緊張が解けずにいた。そんななか、それぞれに家庭問題を抱えながらもたくましく生きる14歳の少女エカと親友ナティア。だがナティアに思いをよせる青年の出現によって、少女たちの運命は大きな変化を迎える。ジョージアの新世代の監督が贈る、少女たちの成長と友情を描いた青春ドラマ。岩波ホールほかにて公開中。

監督:ナナ・エクフティミシュビリ、ジモン・グロス
出演:リカ・バブルアニ、マリアム・ボケリア


旧作もcheck!

『裸足の季節』

©2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT

 いまだ古い慣習を残す北トルコの村。大人たちによって次々に結婚させられていく5人姉妹のなかで、末娘のラーレは自由を求めて走りだす。

監督:デニズ・ガムゼ・エルギュベン
出演:ギュネシ・シェンソイ

DVD発売中 3800円
発売・販売元:ポニーキャニオン

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