© Céline Nieszawer

《映画でぶらぶら》強烈なリズムの中でくり広げられる、人々の命を賭けたショータイム

COLUMN, MOVIE/TV SERIES, CULTURE

 『BPM ビート・パー・ミニット』という一風変わったタイトルは、一分間の心拍数と音楽のテンポの両方を意味する言葉。その名の通り、映画は、個性豊かな人々のドラマと彼らが奏でる鼓動、その合間を紡ぐダンス・ミュージックのリズムからなる。

 『BPM』は、90年代のパリで、エイズ政策を変革するために闘った「ACT UP-Paris」を題材にした映画。中心には、HIVに感染した青年ショーンと、彼に恋するナタンとのラブストーリーがある。

 物語は、マイノリティの権利のために闘ったハーヴェイ・ミルクの伝記映画『ミルク』を思い出させる。だが、あくまでミルクというひとりの男の半生を描く『ミルク』に対し、『BPM』はショーンとナタンをめぐるドラマであると同時に、ふたりが属するACT UP-Parisの活動を描いた群像劇だ。彼らがどれだけ勇敢に政府や社会と闘ったか。実際に団体に所属していた監督は、ロマンチックな恋物語と並行して、その活動の変遷を誠実に映し出す。

 年齢や性別も様々なメンバーたちは、定期的にミーティングを開く。SNSのまだない当時、それは政治的な場であり、出会いの場でもあった。ショーンとナタンが出会うのもこのミーティングでのこと。会議ではしばしば議論が起こり、生き生きと論じ合う姿は、見る者を興奮させる。

 メンバーの多くはHIV感染者。「HIV/エイズ=同性愛者の病」という誤解のなかで、患者や感染者たちは、差別を受け、社会から蔑ろにされる。だから彼らは、自らを守るために声をあげ、社会へと飛び込んでいく。大胆な方法でデモを行い、製薬会社の情報隠蔽を告発し、学校に乱入しコンドームを配る。それは、いわば彼らの命を賭けたショータイムだ。社会を変革するためのショーは怒りに満ちている。だがその根底には、生への希望がある。

 死の影は、いつも過激で、ときに仲間たちをも挑発していたショーンにも、否応なく忍び寄る。快活でユーモアに溢れていた彼が徐々に孤独に陥っていく姿を見るのはつらい。その横で、ナタンはじっとすべての成り行きを見守っている。

 出会いと別れをくり返しながら、それでもショーは続いていく。去っていった者たちの意思を引き継ぎながら。彼らの心拍数のリズムは、決して止まらない。

オーディションによって選ばれた出演者たち。ショーンとナタンを演じるふたりはもちろん、すべての出演者たちが、エネルギッシュな魅力を放っている。

This Month Movie『BPM ビート・パー・ミニット』 

 1990年代初頭のパリ。HIV/エイズが猛威を振るうなか、適切な治療法が開発されず、患者や感染者たちは偏見や差別に苦しんでいた。そんな中、自分たちの身を守るために立ち上がった、活動団体「ACT UP-Paris(アクトアップ・パリ)」のメンバーたちの闘いの記録を、HIV感染者の青年ショーンと彼に恋したナタンの関係を軸に描き出す。昨年のカンヌ映画祭グランプリ受賞作。3月24日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。

監督:ロバン・カンピヨ
出演:ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、アルノー・ヴァロワ


旧作もcheck!

『ミルク』

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70年代、同性愛者として米国史上初めて公職に就いた政治家ハーヴェイ・ミルクの激動の半生。『BPM』とはまた違う、ある闘争の記録。

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ショーン・ペン

DVD発売中 3800円
発売・販売元:ポニーキャニオン

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