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《映画でぶらぶら》娘と母のふたつの物語を内包する、爽快感とユーモアに溢れた青春映画


 『フランシス・ハ』で脚本と主演を兼ね、最近のインディーズ系アメリカ映画には欠かせない女優であるグレタ・ガーウィグ。このたび公開される『レディ・バード』は、彼女が初めて手がけた長編劇映画。監督自身の高校生活をベースとした本作は、爽快感とユーモアに溢れた青春映画だ。

 「レディ・バード」とは、本来はてんとう虫を意味する言葉。主人公の本名はクリスティンだが、平凡さを嫌い、“レディ・バード”という新しい名前を自らにつける。映画は、少し自意識が高めな彼女の、高校生活最後の1年間を映し出す。だが彼女の生活は、どちらかといえば凡庸だ。演劇部で知り合った好青年ダニーとの可愛らしいデート風景。学校への小さな反抗。ダニーと破局したあとにつきあう、プレイボーイのカイルとの若干痛々しい初体験。そして親友ジュリーとまるで恋人同士のように笑いあう姿。それらはどれも„レディ・バード“らしいセンスには溢れているが、この年代の子が誰しも体験する出来事ともいえる。

 その凡庸さは、映画のスピード感のせいでもある。普通に撮れば6時間以上になるという膨大な量の脚本を90分にまで縮めたため、どの瞬間も次々に時間の流れに飲まれていく。そんななか、本作がとりわけ丁寧に描くのは、レディ・バードと母マリオンの確執。年老いた夫が失職し、看護師として家計を担う母マリオンは、娘に厳しく当たる。そんな母に反発する娘は、自分で自分の名前を決め、片田舎の町には似合わない、特別な誰かであることを望む。だが反発し合うふたりの物語が、ある瞬間からふいに混じり合う。娘の物語から、かつて娘だった母の物語がふと浮かび上がる。その瞬間、物語の見え方ががらりと変わる。

 それは、同時期に公開される映画『30年後の同窓会』とどこか重なり合う。イラク戦争で死んだ息子の遺体を引き取るため、ベトナム戦争時の戦友2人と旅をする父。こちらの映画では、二つの戦争とそれぞれの戦友の存在を通して、年老いた父と、すでにこの世にはいない息子の人生が交差する。

 自分が特別な誰かであること。自分の歩んだ道は、かつて誰かが歩んだ道であると知ること。一見相反して見えるこの二つの事実を悟り、レディ・バードはまた新たな自分を発見するだろう。

映画の中では描かれないが、母マリオンと父ラリーの過去の物語も気になるところ

This Month Movie『レディ・バード』 

 2002年、カリフォルニア州サクラメント。カトリック系高校に通うクリスティンは自分に“レディ・バード”という名前を付け、都会の大学へ行くことを夢見ていた。だが母は、家の経済事情から地元の大学へ進学するよう主張する。苛立つ彼女はある作戦を練るが…。本作が初長編監督作となる女優グレタ・ガーウィグが、自身の経験を基に書き上げた、高校最後の年を過ごす少女の青春物語。TOHOシネマズシャンテほかにて公開中。

監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、トレイシー・レッツ

旧作もcheck!

『6才のボクが、大人になるまで。』

©2014 Boyhood Inc./IFC Productions, L.L.C. All Rights Reserved.

 一人の少年の6歳から18歳までの成長を、実際に12年にわたって撮影。こでもまた親と子のそれぞれの成長譚が描かれる。

監督:リチャード・リンクレイター
出演:エラー・コルトレーン、イーサン・ホーク
Blu-ray:1886円+ 税/DVD:1429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

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