女たちが話すこと。それはしばしば、取るに足らない、無意味な行為として扱われる。中高年女性の茶飲み話や、若い女性の恋愛話。どれもとりとめのないおしゃべりばかり、そう思われている。だからこそサラ・ポーリーは、女たちが話しつづけるという行為、ただそれだけで映画を成立させてみせる。
昔ながらの自給自足の生活を送る村で、あるおぞましい事件が起こる。一部の男たちが、寝ている間に村の女性たちを次々にレイプしていた。しかも被害者の声は、つくり話だ、妄想だと男性らにしりぞけられてきた。ようやくすべてが明らかになり、加害者たちは警察に連行されるが、女たちの人生は破壊され元には戻らない。被害を無視しつづけた男たちの罪は、あまりにも重い。
そこで女たちは、男たちが村を出ている間に、今後の方針を決める投票と、代表者らによる話し合いを始める。選択肢は3つ。すべてを赦すか、ここに残り男と戦うか、女だけで村を去るか。読み書きを習うことを禁じられた彼女たちは、納屋のなか、夜を徹して話し合いを続ける。
作中では、徹底して村の男性を登場させない。加害者、妻を殴る夫、それを傍観していた大勢、どの男にも顔と声を与えず、代わりに女たちの顔と声によって物語を紡いでいく。ただし、まだ幼い少年たちとトランスの男性は別だ。そして、かつて村を追い出され、いまは教師をしている男だけが、書記として会議への参加を許される。
どの道を選んでも苦難が予想され、意見はなかなか一致しない。世代、家庭環境、受けた被害とそのトラウマ。抱えるものはそれぞれに違い、ときに対立が起きる。けれど話し合いが決裂しそうになるたび、機知とユーモア、思慮深さによって場がおさめられる。女性は感情的で論理的な話ができない、という馬鹿げた偏見が、ものの見事に覆されていく。
なにが最善の道なのか。答えを探すなかで、これは女だけの問題ではないことが明らかになる。女性を抑圧する差別的な社会構造は、性的少数者や子供にも大きな被害をもたらし、男性にとっても有害なのだ。だから女たちは、現在のシステムを壊し、新たな社会をつくろうと決意する。そして力強い声と顔が、画面を埋め尽くす。

話し合いを主導する女性のひとり、オーナ役をルーニー・マーラが演じ、書記役をベン・ウィショーが演じる。
This Month Movie
『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
2010年、周囲から隔絶された村で、キリスト教一派の人々は自給自足の生活を送っていた。だが、女性たちを狙った連続レイプ事件が起き、村の生活は一変。被害者たちはついに立ち上がり、自らの未来をかけた話し合いを行うことに。選択肢は3つ。すべてを赦す、男たちと戦う、女たちだけで村を去る。果たして彼女たちの選択は。アカデミー賞脚色賞を受賞した、力強いフェミニズム映画。
TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中。
監督:サラ・ポーリー
出演:ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー
旧作もcheck!
『未来を花束にして』

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1910年代のイギリスで、参政権を求めて戦った女性たち、〈サフラジェット〉の勇気と気迫に満ちた姿を描く。
監督:サラ・ガヴロン
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