熊本県産の赤牛ロース肉をつかったタリアータ・ディ・マンゾォ © Waki Hamatsu

《白金高輪》素朴ながらも味わい深いトスカーナの肉料理

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 食欲の秋に味わっていただきたいイタリア料理は、日本では「タリアータ」と呼ばれる牛肉をつかった一皿です。

 この「タリアータ」の語源はスライスするという意味のタリアーレ(tagliare)。牛肉を意味するマンゾォ(manzo)という単語とあわせて「タリアータ・ディ・マンゾォ」(Tagliata di Manzo)と呼ばれ、イタリアでは文字通りスライスした牛肉を盛り付けた一皿のことを言います。

 東京で食べられるタリアータは通常の場合、バルサミコのソースにパルミジャーノが散らされ、ルッコラのサラダを添えて洒落た印象になるのですが、この白金にあるエスプリメで味わっていただきたい一皿は、熊本県産赤牛のロース肉をスライスして白インゲン豆を添えたシンプルなものです。

 エスプリメのオーナーでもある小池シェフは長年にわたり東京を代表するイタリア料理の老舗として知られるアルポルトで働き、シェフを任されていたときには赤ワインと香草の2種類のソースで味わう贅沢な「タリアータ」を作っていました。しかし、初めてイタリアに渡って「タリアータ・ディ・マンゾォ」発祥の地と言われるトスカーナを訪れ、今ではミシュラン2つ星の評価を受けるブラカリ (Bracali) で出会ったのはスライスした牛肉に白インゲン豆を添えただけの「タリアータ」でした。「素朴というかシンプル過ぎて、初めて見た時はがっかりした」というのが小池シェフの第一印象でしたが、「でも、食べてみるとストレートにおいしいんだよ」と納得の味わいだったようです。

 実際にブラカリで働き初めて知ったのは、牛肉の味付けは塩と胡椒だけでソースはなし。その一方で、添えてある白インゲン豆には、しっかりとパセリやバジル、ニンニク、ローズマリーで香りが付けられていたということです。「星付きのレストランでしか働かない」と意気込んでイタリアに渡った小池シェフですが、こういった料理に出会って「色気のない素朴な料理が実は一番おいしい。イタリア料理の本当の魅力だ」と気づいたそうです。

 因みに、小池シェフのつくる素朴ながらも味わい深い「タリアータ」を味わえるエスプリメは白金といっても小洒落たプラチナ通りではなく、地元の人たちが愛着と若干の自虐心をもって「ブリキ通り」と呼ぶ、昭和の趣が色濃く残る商店街にあるケーキ屋さんの上の小さなレストランです。是非そんな控えめな空間でシンプルだからこそパワフルな牛肉の一皿を味わってみてはいかがでしょうか?

『色気のない素朴な料理が実は一番美味しい』と語る小池シェフ© Waki Hamatsu


エスプリメ

東京都港区白金5-12-17 2F

03-5422-6820

http://www.eatpia.com/restaurant/esprime-shirokane-italian


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