女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、さまざまな人にお話を聞きながら、女性の健康課題や働き方について考えていきます。
今年の6月号のフェムトークでも紹介した「性共育プロジェクト(※1)」から、学習プログラム「LOVE GROWS(ラブグローズ)」がリリースされた。「LOVE GROWS」は、「マッチングアプリ」のシチュエーションを用いて、学校で学ぶ機会が少ない愛や性、リレーションシップに関する教養を深めるもの。11月11日には、大学生24人を集め「LOVE GROWS」を使ったトライアル授業が行われた。プロジェクトを運営する#しかたなくない事務局の落葉えりかさんと、プログラムの開発協力者の一人でもある、千葉大学大学院教育学研究科の郡司日奈乃さんに、開発に至る経緯やその想いを聞いた。
学習プログラム「LOVE GROWS」とは
LOVE GROWS誕生の経緯を、落葉さんはこう語る。「性共育プロジェクトでは、これからの性教育のあり方を考える有志約20名が、学校、職場、家庭、地域、オンラインの5つの班に分かれて議論を重ね、全4回のワークショップを行ってきました。体験型のコンテンツづくりをゴールに掲げ、まずは『学校』班が掲げた『教科書を介した形式的な学びではなく、若者がもっと身近に感じられる性教育プログラムの開発』というアイデアを採用し、企業や専門家の協力も得ながら『LOVE GROWS』の開発に至りました」
プログラムでは8枚のカードを使う。表にはマッチングアプリを使用するなかで起こりうるシチュエーションが書かれており、裏側にはそれぞれの場面に関係するキーワードと意味が記されている。例えば、「出会ったその日に、いいムードに」というカードがある。「性的関係を持ちたいが、ストレートに確認するのはムードが壊れそう。どうやって相手の気持ちを探ろう?」というカードの裏には「性的同意」というキーワードがあり、「自分の気持ちを押し付けたり、逆に相手任せや言いなりになるのは性暴力につながる危険も」といったように、思考を深めるヒントが得られる。
参加者は、3〜4人のグループに分かれ、まずは表のシチュエーションに沿って、「適切な言動や行動とはなにか」を話し合う。さらに裏のキーワードを読み、もう一度話し合う。複数の異なるカードで対話を重ね、自身の言動を見直したり、より理想的な言動について考えたりする。プログラムの監修には、世界最大級のマッチングアプリ『Tinder(※2)』が協力した。コラボに至った理由について「同社は若い世代に対して『同意』の重要性を提起するサイト『Let’s Talk Consent』を公開するなど、性共育プロジェクトとの親和性が高いと感じた」と落葉さんは説明する。
開発に加わった郡司さんは、大学院で子供たちに必要な授業を作る研究をしているが、「性教育を学校だけに委ねていては十分ではないと思っており、性共育プロジェクトの存在を知って、目指す方向に共感した」と話す。#しかたなくないプロジェクト事務局が開発に際して一番こだわったことは、キーワードの選定だったという。「たとえば『Sexting(※3)』や『ボディ・ニュートラル(※4)』といったように、少し難しいけど思考のフックになるような言葉をあえて選びました。その場では知らなくていいんです。知らない言葉に出会って、新たな視点に気づいてもらうことが狙いです」
「失敗すること」が実はとても大事
明治安田生命保険が「いい夫婦の日」に合わせて毎年実施する全国調査(※5)によると、2022年に結婚した夫婦の出会いのきっかけは、「マッチングアプリ」が最も多く22・6%。マッチングアプリの利用が多くなってきているからこそ、「こうしたプログラムを介して事前に“失敗する”ことが大事」だと郡司さんはいう。ここでいう“失敗”とは、例えば、価値観の違いが浮き彫りになったり、コミュニケーションのずれを感じたりすることだ。アプリでは多様な出会いが想定される。「だからこそ禁止するのではなく、どうしたらうまくコミュニケーションできるのか考えられるツールになることを目指しました」と落葉さんと郡司さんは強調する。
若者たちが、性について困った時に、すぐに相談できる環境を作ること。そのためには、若者自身が、擬似体験を重ね、新たな視点や価値観に触れておく必要がある。たくさん練習して“失敗”できる場所を提供するのも、大人の役目なのかもしれない。
※1 オンラインピル処⽅サービス「スマルナ」を展開する株式会社ネクイノと、⼀般社団法⼈渋⾕未来デザインが共同で展開する社会実装プロジェクト
※2 Tinderのサービスは18歳以上が利用可能
※3 スマートフォン上で性的なメッセージや画像などをやり取りする行為のこと。
※4 自分の身体をすべて愛するというよりも、ありのままの自分を受け入れ尊重するという考え方。
※5 明治安田生命保険相互会社・夫婦をテーマにしたアンケート調査(2022年10月12日~10月18日実施、回答者数1,620人)

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
フェムケアプロジェクトも1周年を迎え、絶賛アップデート中!

Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。
