女性のココロとカラダのケアを考え、よりよい未来につなげる「Fem Care Project」。本誌編集長・日下紗代子が、3月の国際女性デー企画「知るって、やさしい一歩!」について振り返ります。
ちょうど一年前。2023年4月号の「フェムトーク」は、3月8日の「国際女性デー」に合わせて、フェムケアプロジェクトとして初めて開催した大型オンラインイベント『フェムテックを、もっと!』を振り返る内容でした。私は、そのとき登壇いただいたある方の「やさしさの半分は知識」という言葉にハッとし、この年のイベントを総括する言葉として書き残しました。じつは、この言葉が起点となって生まれたのが、今年の国際女性デーイベントのコンセプトである『知るって、やさしい一歩!』です。健康のこと、キャリアのこと、働く環境や、家族、仲間のこと。知識があれば、自分自身をいたわることができ、身近な人の力にもなれるかもしれない。今年は、女性特有の健康課題をみなさんととともに「知る」ことに加え、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進が、多様な人の生きやすい社会の実現につながることを大きな柱に据えて取り組みました。
もっと!から、一歩!へ
なかでも、大きなチャレンジだったのが、3月8日の産経新聞特別ラッピング紙面です。これまで約2年半の活動を通じて、メトロポリターナでは何度も特集や連載を行ってきました。女性特有の健康課題を、社会全体の課題としてとらえるといった変化も少しずつ感じていましたが、その一方で、フェムケアプロジェクトが大事にしてきた、性別や世代を超えた「相互理解」という観点では、まだまだ届けられていない人がたくさんいるという思いもありました。その課題と向き合うため、3月8日というシンボリックな日に、国際女性デーのシンボルである“ミモザ”をあしらったイラストで産経新聞を丸ごと包む「ラッピング紙面」を企画、青い題字もミモザカラーに変えました。嬉しいことに、この企画に多くの企業や団体、個人の方が共感してくださり、全国版で実現することができました。
この紙面は、昨年7月号にも掲載した「折り合う。分かり合える。」のクリエイティブチームと、何度も議論を重ねて生まれました。表面では、「ぜんぶは、わからなくて」と女性の不調に寄り添う難しさに戸惑う男性と、「あなたと私はちがうから」と、普段伝えられていない本音や感謝の気持ちをもつ女性とがお互いに背を向けていますが、紙面を裏返し、点線に沿って新聞を折り合うことで、ふたりが向き合い「ぜんぶはわからなくていいかもね。あなたと私はちがうから」という新たなメッセージが生まれる仕掛けになっています。さらに紙面を広げると「知ろうとすることって、いいかもね。それも、やさしい一歩だから。」という言葉が出現。性別のみならず、一人ひとりが違う社会において、身近な人ですら、その不調や変化のすべてをわかることは難しいけれど、だからこそ、少しずつでも知ろうとする思いが広がることが、やさしい社会につながるのではないか。こうして、あたたかみのある、やさしい紙面ができ、たくさんの反響もありました。3月号の表紙でも、メトロポくんとリターナちゃんが向き合う姿を表現し、今回賛同いただいた企業や個人のみなさまの取り組みを紹介しています。
今回ラッピング紙面を実施してよかったことがもうひとつあります。社内の認識が向上したことです。この紙面を掲載するにあたり、昨年12月号の「フェムトーク」でも紹介した「フェムテック認定資格」に産経新聞社としてチャレンジしたところ、想像以上に多くの社員が参加し、「フェムテックアンバサダー・カンパニー」の表彰を受けました。女性の健康課題に関する知識の向上や、時代の変化に向き合うことを、私たちも一緒に実践していく。これまで交わることの少なかった組織内に、仲間の困りごとに寄り添うための共通言語が生まれ、よりよい環境づくりを実現させるための味方が増えていることを実感しました。
もしも、紙面やオンライン、リアルのイベントを通じて、読者の皆様が自分自身に対してや周囲への前向きな変化につながっていたとしたら、なによりもうれしいことです。フェムケアプロジェクトはこれからも、ありたい未来の姿を描き、よりよい未来に向けて、対話や想像のきっかけにつながるコンテンツを発信していきますので、新年度もよろしくお願いします!
3月8日の産経新聞1面と最終面を包む特別ラッピング紙面を実施した。通常は青色の題字もミモザカラーに。
女性の健康やDEIに取り組む企業の紹介など13ページにわたる大特集をした。
ラッピング紙面の詳細はこちらから

メトロポリターナ編集長
日下紗代子
みんなでやさしい一歩を踏み出そう!
Fem Care Project
「フェムケアプロジェクト」は、産経新聞社が主催する、女性の心と身体の「ケア」を考え、よりよい未来につなげるプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方について情報発信をしながら考えていく。