5、6日の両日、東京・浅草の「浅草公会堂」を舞台に繰り広げられたストリートダンスの公演「FINAL LEGEND V」。2011年から行われているコレオグラファー(振付師)のコンテスト「Legend TOKYO」(レジェンド・トーキョー)の歴代受賞者15組が集い、それぞれの世界をダンスで表現しました。
「FINAL LEGEND V」ではさまざまなコラボが繰り広げられました=5日、東京・浅草の「浅草公会堂」 (写真・田中幸美)
今回は、世界に通用するトップダンサーとして人気の大貫勇輔さんと、津軽三味線奏者の浅野祥さん、そして光による空間演出パフォーマンス集団「かぐづち」がゲストとして出演し、それぞれのコレオグラファーと競演するなどして花を添えました。
大貫さんはカラーの異なる3作品に登場し、アクロバットを織り交ぜた柔軟性の高い踊りで観客を魅了していました。
長身を生かしたダイナミックな踊りで観客を魅了した大貫勇輔さん
アクロバットも得意とする大貫勇輔さん
また、浅野さんのアコースティックで力強くて人間くさい三味線の音色は、ヒップホップとの融合という意外性に気付かせてくれました。
浅野祥さんの津軽三味線は心にずっしりと響きます
司会は、元お笑い芸人で、現在は演出家・脚本家として活動するマンボウやしろこと、家城啓之さんが務め、「ダンスはまったく初めて。なんでこんな仕事が舞い込んだんだろう」とぼやきながらも出演者との軽妙なやり取りで会場を沸かせていました。
奇をてらわない絶妙なやり取りで好感のもてた司会の家城啓之さん(右)と芸術監督を務めたAKIHITOさん
また、昨年の「レジェンド・トーキョー6」で優秀作品賞を獲得し6代目の〝レジェンド〟となった「AKIHITO」さんがショー全体の芸術監督を務めたほか、冒頭から黒子で登場し、最後に素性を明かして拍手喝采を受けた2代目レジェンドの伊藤今人さん(梅棒)がサプライズ出演しました。
黒子の正体はなんと伊藤今人さんでした
フィナーレに正体を明かした伊藤今人さん(右)と司会のマンボウやしろさん
今年のテーマは、「2・5次元コレオグラフィー」。マンガやアニメなど2次元作品を舞台化したものを2・5次元舞台といいますが、レジェンド・トーキョーの歴代受賞作の中でも、特にマンガやアニメのような強烈な個性を放つ作品が大集結しました。
マンガ「ちはやふる」に題材を得た作品やお色気と艶を強調するダンスパフォーマンス「バーレスク」を再現したもの、さらにはアニメにインスパイアされてできた作品などさまざまです。
コレォグラファーakaneさんによる「日本万国博覧会」
コレオグラファーZoo-Zooさんによる「ズニクロ」には、司会のマンボウやしろさんも参加しました
中でも異彩を放っていたのは、AKIHITOさんと康智さんが振り付けを担当する「Encounter Engravers」の演目「オノマトペ」。昨年の「レジェンド・トーキョー6」で優秀作品賞を獲得した作品です。これは、楽曲をいっさい使用せず、「ペペペペペー」とか「チャチャチャ」という人の声が発する擬声語のみで全編を構成。音楽に合わせて踊るというストリートダンスの常識を根本から覆す意外性に会場から大きな拍手が送られました。
AKIHITOさんと康智さんが振り付けを担当する「Encounter Engravers」の演目「オノマトペ」
「オノマトペ」はいっさい楽曲が流れず、擬声語だけで構成されます
また梅棒は、第1回のレジェンド・トーキョーで審査員賞を獲得した「駅、人、愛、無限大」のリメイク版で登場。 「Xジャパン」の「Rusty Nail」に合わせて梅棒ワールド全開のパフォーマンスを見せると会場は笑いと拍手のうずに包まれました。リーダーの今人さんは今回、黒子に徹して作品作りにはノータッチだったそう。
梅棒ワールド全開の「駅、人、愛、無限大」。これが見たくて会場に足を運ぶファンも多いそう
この公演を主宰した「ジャスト・ビー」の工藤光昭さんは「今、2・5次元ミュージカルは日本の舞台作品を海外に広める可能性を持ったコンテンツとして大きな注目を集めています。その中でも言葉に頼らないダンスの着目は作品を世界に広めるため重要な要素です。この公演が日本の大衆文化とダンス文化の融合が進む起爆剤になればいいと思います」と話していました。
(写真はすべて田中幸美)