豊かな自然から着想を得たデザインが、日々の暮らしに息づく北欧フィンランド。「ザ・フィンランドデザイン展-自然が宿るライフスタイル」が、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中だ。本展ナビゲーターであり、ファッションを中心に生活全般を彩るブランド「minä perhonen(ミナ ペルホネン)」のデザイナー・皆川明さんに、フィンランドデザインの魅力や展覧会の見どころを聞いた。

「今回はフィンランドデザイン全体を時系列でたどる大変貴重な機会。各デザイナーの代表作を見たり、世代ごとの影響関係や素材別の流れを追えたりと、いろんな視点や文脈で鑑賞できるのが楽しい。まさに〝ザ〟というべき展覧会ですね」。
同国の近代化と共に発展したデザインの歴史を、50人以上のデザイナーやアーティストの作品約250点と関係資料約80点で多角的に紹介している。

長く愛せるもの
皆川さんが初めてフィンランドを訪れたのは35年前の冬。まだ19歳の学生だった。「寒く薄暗い中に、柔らかな明かりが見えた。簡素な中に、明るさや楽しさのあるモノのたたずまいに心がひかれた。人とデザインが寄り添う-そんな感覚を初めて味わった」と振り返る。
当時は大量消費があたりまえの時代。ところがフィンランドでは伝統的に、長く愛着を持って使えるものを求めてきた。アルテックの家具に、アラビア製陶所の陶器、イッタラのガラス器、マリメッコのテキスタイル…。本展にも、何十年と作り続けられている名品が並ぶが、「作品」の一部は今も世界中で販売され、買うことができるのが嬉しい。

自然から生まれる
デザイナーとは、自らの体験とイマジネーションを携えて、素材と機能を融合させる仕事だという。例えばフィンランドを代表する建築家、アルヴァ・アアルト(1898~1976年)の有名なガラスの花瓶「サヴォイ」は、湖やオーロラを想起させる。氷山から杏茸(アンズタケ)まで、同国らしい自然を表現したタピオ・ヴィルッカラ(1915~85年)のガラス器も魅力的だ。


長年フィンランドを愛し、2019年の日本・フィンランド外交関係樹立100周年の際には親善大使も務めた皆川さん。本展では音声コンテンツの制作にも参加。皆川さんがフィンランドへの思いをエッセイでつづり、それをJ-WAVEナビゲーターのクリス智子さんが朗読。フィンランドデザインへの理解を深める上でも、聞き逃せないコンテンツに仕上がっている。

「ベビーパッケージ」に感心
展示の中で、皆川さんを最も感心させたのが、フィンランドの「ベビーパッケージ」だ。国から子供が生まれた家族に贈られる子育てセットで、良質なデザインのベビー服や道具、ぬいぐるみなど一式が詰まっている。「子供たちが初めて出会うデザインが、国からサポートされる。そういう土壌から、良いデザイナーや良い生活者が育ってきたんだなと、腑に落ちました」とほほ笑む。

「家族とか、小さな単位の暮らしをいかに楽しく、幸せなものにするか。技術やツールが発達し、社会は目まぐるしく変化するけれど、自分に近いところはあまり変わらないで、ずっと続いていく…。その中に、幸福感があるんだと、本展から感じ取れるかもしれません。日本とフィンランドは共に、海に囲まれ森も多く、資源をあまり持たない国ですが、そこで暮らす喜びについて、互いに気づく機会になれば面白いと思います」。
《「Iittala X minä perhonen」グッズも好評販売中》
会場では、ムーミングッズの他、皆川明さんのデザインによる磁器とガラスで構成されるコレクションも販売。日常生活に軽やかさと幸福をもたらす鳥のモチーフが特徴的なコラボグッズだ。
「鳥は好んでよく描くモチーフの一つ。鳥は人間にとって夢のような可能性を持った生き物。(中略)誰もがこのコレクションで自分の鳥を見つけられるといいですね」という。
テーブルウェアのシェイプは、本展にも登場するカイ・フランクが手がけたティーマ。来年で70周年を迎えるデザインプロダクトは、今もイッタラに受け継がれている。

《フィンランド製のウッドパネルを使用したフォトスポット》
展示室を出たところには、フィンランドのログハウスメーカー株式会社ホンカ・ジャパン(https://www.honka.co.jp/)提供の木材を壁面に使用した、フォトスポットも。
テーブルやスツールなどアルテックの家具を展示して、フィンランドの住空間を再現している。

ホンカ・ジャパンのインスタグラムキャンペーン〈開催期間:~2022年1月31日〉
フォトスポットで撮影した写真をインスタグラムにアップすると、素敵なプレゼントが当たる
かも!?詳細はこちらまで。(https://www.honka.co.jp/finnish_insta_cam/)
「ザ・フィンランドデザイン展-自然が宿るライフスタイル」

2021年12月7日(火)~2022年1月30日(日)※1月1日(土・祝)のみ休館
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 東急百貨店本店横)
開館時間:10:00~18:00 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は各閉館時刻の30分前まで)
*会期中の全ての土日祝および最終週の1/24(月)~30(日)は【オンラインによる入場日時予約】が必要。
入館料:一般 1,700円、大学・高校生 1,000円、中学・小学生 700円
問い合わせ:Tel. 050-5541-8600(ハローダイヤル/9:00〜20:00)
公式HP https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_Finland/