エア本屋の「いか文庫」。閉店後の店内で交わされる店主とバイトちゃんのイカした会話、本のお話。
店主(以下 店) :おつかれさま〜。今日は送別品用っぽい本が売れた気がしない?
バイトちゃん(以下 バ) :そうですねぇ。3月だし、季節的にお別れの季節だから…。
店:意味はすこし違うけど、”お別れ“で思い出した! この絵本、知ってる?
バ:ヨシタケシンスケさん!
店:そうです! 最近、いか文庫内でブームになってるヨシタケさんの絵本です。タイトルの『このあとどうしちゃおう』っていうのは、死んじゃったおじいちゃんが生前こっそり書いていたノートのことで、それを孫が見つけて読むところから、この絵本が始まるんだけどね。
バ:ノートには何が書いてあったんですか!?
店:「このあとのよてい」とか「うまれかわったらなりたいもの」とか「てんごくってきっとこんなところ」なんてページがあって、絵と文字で詳しく書かれてあるの。
バ:天国ってどんなふうに描かれているんですか?
店:テーマパークみたいだよ。「じめんがやわらかいので、ころんでもいたくない」っていうのにクスッとしちゃった。
バ:地面がやわらかい? たしかに天国はコンクリートとかじゃなくて、フワフワしてそう!
店:そして私、最後に泣いてしまいました。悲しくてというより、じわーっときてしまった。
バ:じわーっと? 気になるなぁ。
店:でね、みんなを見守っていく方法っていうページもあるんだけど、それを見て思い出したのがこれ。『とりつくしま』。
バ:印象的な装丁!
店:この世に思いを残したまま死んでしまった人が、「なにかモノになることで戻ることができる」っていう物語なんだけどね。
バ:モノに?
店:たとえば、旦那さんが愛用しているマグカップとか、リビングにあるマッサージ機とか。誰にも気がついてはもらえないんだけど、そのモノになって、ずっと見守ることができるの。未練があるから、切ないシーンもあるんだけどね。
バ:店主は以前、そんな話をしていましたよね?
店:よく覚えてるね! おばあちゃんと出かけると、絶対黒い蝶々に出くわすの。それを見て、いつも「おじいさん来たー」って言うんだよね、おばあちゃん。
バ:そうだ! その話だ!
店:それに叔母さんも、ハエが飛んでくると「お、来たね」って、亡くなった旦那さんとして話しかけるんだ。
バ:ハエ…。
店:そう、ハエ。でもそういうの、いいよね。お別れするのは悲しいけれど、たまにこういう本でじっくり考えてみてもいいかなって思える2冊です。
バ:私もおじいちゃんのことを考えながら、さっそく読んでみます!
いかぶんこ
お店も無いし、商品も無いけど、日々どこかで開店しているエア本屋。本と本屋が好きな店主と、イカが大好きなバイトちゃんの2人で、今日もどこかで開店中