フェスとライブを愛する音楽女子、稲葉智美が気になるディスクをご紹介!今回のテーマは『失恋ソングとアイライン』。

《音楽日々帖》失恋ソングとアイライン


 エイミー・ワインハウスが27歳の若さでこの世を去ってから5年。この夏公開された映画『AMY』を見てからは、お騒がせセレブではなく同世代の女性としてエイミーを見るようになりました。23歳のときにリリースされた『バック・トゥ・ブラック』は、激しくも悲しい失恋体験から生まれた作品。表題曲のサビに“口先だけのサヨナラを交わし、私は100回死んだ。彼は恋人の元へ、私は暗闇に逆戻り”とあります。二股しているうえに薬物中毒の彼氏なんて別れてしまえばよかったのに、エイミーは皮肉にも「苦痛を味わってこそ良い曲がつくれる」アーティスト。若き女性が傷心を紡いで織り上げた哀歌と思いながら聴いたら、石川さゆりの「天城越え」並みに泣けてきました。ちなみに、彼氏との思い出の音楽も取り入れてしまうのがエイミー流。音づくりはもちろん、トレードマークの極太アイラインと特盛ヘアは、60年代ガールズ・グループのロネッツの影響なんだとか。

 そんなエイミー・ワインハウスに出会わなければ「今の私はない」と断言しているのは、現在28歳のアデル。前作『21』では元彼への恨みつらみ(ここまで売れると呪いに近い)を歌っていたアデルですが、お母さんとなってからリリースした最新作の『25』には、過去を清算しようとする前向きさが出てきました。

 アデルもまた、くっきりアイメイクのお手本になることが多いアーティストです。失恋の涙でお化粧が崩れてもアイラインを引き直したら立ち上がれそうだと、彼女の歌を聴いていて思いました。

AMY WINEHOUSE『Back To Black』

アルコールと薬物依存で早逝したシンガーの遺作であり2作目。マーク・ロンソン&サラーム・レミによる60’sヴィンテージ・サウンドと貫禄ある歌声で世界を驚かせた

USM JAPAN 2006

THE RONETTES『Be My Baby: The Very Best Of The Ronettes』

1960年代に活躍した姉妹といとこによる3人組ガールズ・グループ。フィル・スペクターによる「Be My Baby」がヒット。ビーハイヴ(蜂の巣)ヘアにアイラインというスタイルが特徴的

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2011

ADELE『25』

タイトルは制作時の年齢。11月の発売にもかかわらず全英・全米で2015年最高セールスを記録したアルバム。第59回グラミー賞で何部門ノミネートされるのか注目

Hostess 2015


selection&text:稲葉智美(いなば・ともみ)

ラジオDJとして活動するほか、BGM選曲やナレーションを手がける。フェスとライブを愛する音楽女子。週1で英会話教室に通い始め、脳が悲鳴を上げています
Twitter: @tommyjan15





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