photo: Shinichi Yokoyama text: Naoko Ando edit: Kohei Nishihara(EATer)

長坂真護展『Still A "BLACK" STAR』


美術家・長坂真護が、初となる美術館での個展を開催。アトリエを訪ね、その意気込みを聞いた。


アートの力で、環境をよくする
経済システムを構築

 2017年、初めてガーナのスラム街を訪れてから約5年。“絵描きになるつもりはなかった”という長坂真護は、とてつもないスピードで前に進んでいる。

 「23歳で自分が立ち上げた会社が潰れて、その時点で“人生終わったな”って思ったんです。でも、絵を描くことだけは好きだった。だから、海外の街の路上で絵を売るなどして旅費や生活費に充てて暮らしていました。その頃、雑誌の記事がきっかけでガーナのスラム街“アグボグブロシー”のことを知り、興味をもちました。ガイドブックなんてありませんから、ガーナのどこにあるのかもわからないし、交通手段もない。でも何とかたどり着きました」

 そこは、東京ドーム30個分を超えるスラム街。先進国の消費社会が生んだ“世界最大級の電子機器の墓場”だった。1日500円の日当で、大量のガスを吸いながらゴミを燃やして暮らしている若者たち。その光景を見た長坂は、アートの力を使って、ガーナの現状を伝えることを決意したという。

 「持ち帰ったゴミで作品制作を始めました。2018年の個展で初めて高額で絵が売れたので、そのお金でガーナのスラム街にガスマスクを提供して、私立学校も作りました。大きな額を使ったわけではありませんでしたが、実際に足を現地に運んで、行動を形にしていったことで関心を持ってくれる人が増えました。僕は、 “サステナブル・キャピタリズム”(持続する資本主義)を提唱しています。80歳の大金持ちも、バイト代をためた10代の若者も、僕の作品を購入してくださっています。彼らには、アートと暮らす楽しさとともに、“いいことをした”という気持ちが届けられる。そして僕の絵が売れれば売れるほど、ガーナの環境がどんどんよくなっていくという循環です。エシカルな気持ちを持って活動することと、僕が野心家であることとは、両立すると思っています。ガーナのスラム街をなくすことは、僕にとっては最高の贅沢でもあるんです」

 この活動は話題を呼び、作品も、個展を開くたびにそのギャラリーでの最高額を更新するほど売れた。その売り上げを使い、これまでガーナに計1000個以上のガスマスクを届け、スラム街初の私立学校と文化施設を設立することもできた。

 そしてこの秋、自身初となる美術館での展覧会が開催される。

 「大好きな漫画家の井上雄彦さんも展覧会を行った美術館で自分も展覧会ができるなんて、夢にも思っていませんでした。テーマには、輝く星ではなく、いまだ黒い星のままのガーナをいつか輝かせたいという気持ちを込めています」

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日本各地とNY、香港、パリ、ガーナで11のギャラリーやオンラインショップを構える長坂。毎日9時〜17時は作品制作に集中し、アート制作以外の仕事は17時以降に行うようにしているという。
 

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アトリエには、ガーナから持ち帰った大量の廃棄物が。
 

Nagasaka Mago

1984年福井生まれ。2017年6月、ガーナのスラム街を訪れたことをきっかけに、廃材での作品制作をスタート。2019年には、スラム街初の文化施設も設立。この軌跡を追ったドキュメンタリー映画“Still A Black Star”も製作された。現在は、廃棄物処理のリサイクル工場建設を目指すほか、環境を汚染しない農業事業をスラム街の人々とともに展開すべく土地取得を目指す。


約200点の作品が集まる展覧会!

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Let's Go Diversity 2020

新型コロナウイルスの感染症拡大により、世界中の生活が突如一変。古い概念を捨てて新たな思想を築く、長坂が見つめる未来を表現した絵画。

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I'm airplane maker 2021

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FULL MOON 2021

スラム街での農業事業のため、オリーブ栽培を学びに訪れた小豆島。そこにもあったプラスチックごみやシーグラスで制作したシリーズ。

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ミリーちゃん 2021

ガーナのスラム街にあった廃棄物で制作した立体作品「ミリーちゃん」はキャラクター化し、アニメシリーズを展開。“第二のアンパンマン”を目指している。

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Ghana's son 2018

覆い被さるような廃棄物の中からまっすぐにこちらを見つめ、手を伸ばしているアグボグブロシーの少年。彼の目には何が映っているのだろうか。


上野の森美術館で開催中!

長坂真護展 『Still A "BLACK" STAR』

Supported by なんぼや

会期:11月6日(日)まで
会場:上野の森美術館(台東区上野公園1-2)
開館時間:10:00〜17:00 (※入館は閉館の30分前まで)
チケット:一般1400円/高校・大学生・専門学校生1000円/小・中学生600円

あなたもガーナのスラム街を変えられる!
本展では、展示した作品のオンライン販売も行い、その売り上げと入場料の一部を長坂が目指すリサイクル工場建設や、開拓農地の取得などの支援につなげていく。

詳しくは、展覧会公式WEBサイトへ!
https://www.mago-exhibit.jp





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