店先にちょこんと座って「おいでおいで」と手招きするかわいい招き猫は、開運招福のシンボルとして誰からも愛されるキャラクターですよね。
左手を挙げていると人や客を招き、右手を挙げているとお金を招くといわれていることをご存じでしたか?さらに、挙げた手の高さや猫の体の色などによってそれぞれ意味があるのだそうです。
全国それぞれの地方に伝わる招き猫と、瀬戸焼と九谷焼の招き猫の計66点をはじめ、ロシアやアイルランド、アメリカ・ハワイなど珍しい海外の6点、さらに関連グッズ約2000点以上を集めた「開運招福招き猫福の市」が16日(月)まで、横浜市西区の横浜高島屋で開催されています。
北海道と沖縄県を除いた全国の都府県から集められたさまざまな招き猫=横浜市西区の横浜高島屋
見どころは北海道と沖縄を除いた45都府県の個性豊かな招き猫。挙げた手は左右さまざま。鯛の背に乗ったり、何を考えたか真っ赤な蛸を頭に乗せたり、さらに別の猫を何匹も肩車したりと、ユニークなポーズに見ていて思わず笑みがこぼれます。眠そうな目をしていたりどこかとぼけていたりと表情もとても豊かで楽しくなります。
六原張り子(岩手)
相良人形(山形)は頭に蛸をのせた奇天烈なデザインです。海のない米沢で作られたそうです
色も一般的な開運招福の白だけでなく、金運満足・厄除開運の黒、金運招福の金、さらに健康長寿の赤などさまざま。素材も土人形の土や張り子の紙をはじめ、セルロイドや金属、木などバラエティーに富んでいます。
金泥色の三河系三河土人形(愛知)
これらはいずれも愛知県瀬戸市にある招き猫専門の博物館「招き猫ミュージアム」所蔵の一部を借りて展示しています。昭和の初めに作られたものがもっとも古く、ここ最近作られたものが多いそうです。
招き猫は、江戸時代末期に江戸の町で誕生し、達磨や福助と並ぶ日本独特の縁起物のひとつとして親しまれてきました。特に平成に入ってからは、空前のペットブームなどもあり、猫好きの人気を集め、さまざまな招き猫が作られるようになりました。
今戸焼丸〆猫(東京)は、文献に出てくる今戸焼をもとに復元したそうです
山崎張り子(京都)
常石張り子(広島)
招き猫は、不況の時には神頼みならぬ〝招き猫頼み〟で人気を集める傾向があり、20年以上前のバブル崩壊期にはかなりのブームになりました。この展覧会を企画した催事企画会社「オーク」の栄徳久さんによると、家庭で飼われるペット数において猫が犬を上回るだろうという予測が話題になった一昨年くらいから招き猫のイベントの依頼が増えたといいます。となると、現在の招き猫ブームは、昨今の不況を反映しているといえそうですね。
猫人形作家、もりわじんさんの作品
もりわじんさんの作品は、表情もポーズもとても魅力的です
招き猫といえば一般的には、まん丸顔に大きな目と耳を持ち、大きな小判をがっつりつかんだ、いわゆる「常滑系」と呼ばれる60年以上も前に愛知県常滑市の人形店が完成させ、今も作られているものを想像する人が多いでしょう。しかし、会場では実に多彩な招き猫に出合うことができます。
珍しい九谷焼の招き猫
栄さんは「まだまだ知られていないだけで、素材もしぐさもさまざまで奧が深いということがわかっていただければみなさん必ず招き猫に興味を示すと思います」と太鼓判を押します。また、「見ていると暖かい気持ちになって、どこかユーモラスな表情が人を引きつけます」とその魅力について語りました。
会場ではさまざまな作家の斬新な招き猫の販売や、猫をモチーフに制作するアーティストの実演のほか、真っ白な招き猫に自分で絵付けするコーナーなどもあり、招き猫の魅力をたっぷりと味わえる充実の展示となっています。ほら、2000体のネコが「おいで、おいで~」していますよ!!
(写真はすべて田中幸美)
今は亡きロックスターを招き猫にしました。誰だかわかりますか?
会場には招猫神社もあります
◆「開運招福招き猫福の市」は、横浜市西区南幸1-6-31の「横浜高島屋」8階ギャラリーで16日(月)まで。午前10時~午後8時(16日は午後6時閉場)入場無料。問い合わせは☎045・311・5111。