映像やインスタレーション、バンド活動など表現媒体の垣根を越え活躍している美術家 松蔭浩之氏による肖像写真を集めた展覧会「L U S T(欲情)」が、新宿区市谷田町のMIZUMA ART GALLERYで開催されています。
会場には主に、一般女性を被写体とした10点と“美しい”青年を撮った1点の計11作品を展示。聖母マリアをモチーフにした『Can’t Find My Way Home』は使い捨てのレインコートを羽織り、頭にはゴミが落ちてきたような花飾り。抱いている赤ちゃんは紙おむつを付けています。マリアとともに、紛争地などから逃れてきた母親の姿も彷彿とさせます。
『Life During Wartime』の若い女性は、防空頭巾のようなものを身に着け、うつろな目をしています。また、『Let’s Be Adult』の女性は、目の下だけ、化粧を施し、真っ赤な唇の奥からのぞく黒い歯がちょっと不気味です。


《Let's Be Adult》2017 ラムダプリント©MATSUKAGE Courtesy Mizuma Art Gallery
このほか、篠山紀信氏の撮影した山口百恵さんのビキニ写真にインスピレーションを得た『Fade Away』や、上半身裸の青年が怪しい美しさを放つ『Lust for Life』などが展示されています。気づいた人もいるかもしれませんが、作品のタイトルは、すべて曲名です。『Can’t Find My Way Home』は、米ロックバンド「スワンズ」のアルバム〈The Burning World〉(1989年)の収録曲、『Life During Wartime』は、米ロックバンド「トーキング・ヘッズ」が79年にリリースしたシングルなど・・・。すべて、松蔭氏が、作品に最もふさわしいと思って選んだ曲のタイトルだそうです。
高校生時代から、友人や家族、交際相手など身近な人物の肖像写真を撮り続け、この数年、多くのジャズミュージシャンや文化人など撮ってきた松蔭氏。そんな彼は今、「ネット検索は想像力を欠如させ、承認欲求はSNSで簡単に満たされ、表現のベースに渇望がなくとも何となく生きていけるようになり、人間の欲望の在り方そのものが変わってきた」と考えています。
今年制作された11作品すべてには、ありうべき未来が多面的に投影され、被写体となった女性らを通して欲望の根源を映した圧倒的な美しさが表現されています。
また、ギャラリー奥の和室と小展示室では「松蔭浩之展:Early Days」を開催。表現の可能性を探りながらシャッターを切り続けた若き日の松蔭氏が撮った写真や資料を見ることができます。

2つの展示を通して、松蔭氏がなぜ、肖像写真にこだわり続けるのか、写真によって何を表現しようと試みているのか、感じてみて下さい。
松蔭浩之展「L U S T」
会場:MIZUMA ART GALLERY(新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F)
開催期間:6月10日(土)まで
開廊時間:11:00~19:00
休廊日:日曜・月曜・祝日
入場無料