押上喫茶のルーツをひもとく
訪れたのは、押上駅から歩いてほど近い、向島。新橋、赤坂、神楽坂、芳町(旧・日本橋人形町)、浅草とともに東京六花街のひとつとして数えられ、芸妓さんや料亭客が集まる粋な街だ。
「昔は固定電話しかなかったでしょう。このあたりの料亭にくる旦那たちは、ここに電話をかけてきて待ち合わせ場所にしていたんです。昔は、そういうお店がたくさんありましたね」
そう話すのは、「カド」の2代目店主、宮地隆治さん。当時のこの町の喫茶店は、料亭客の待ち合わせ場所として重宝されていたそう。
「最盛期、料亭200軒に芸妓4000人が、向島にはいたとも聞きます。墨田区の中でも異質なカルチャーですよね。今、この店には、観光客や芸術を志すお客さんが多いです」
押上周辺には、老舗の純喫茶に加えて、古民家をリノベした喫茶店、スタイリッシュなコーヒースタンドなどもあって、一息つける、やさしい時間が流れている。その背景には、
花街最盛期の喫茶文化の名残や下町情緒があり、東京スカイツリー開業をきっかけにした新しい風が吹いたことが大きいだろう。そして、かねてから"ものづくり"が盛んなこの
町ならではの気風も変わらず息づいている。
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ゴールデンウィークも終わり、さあ、これから! なんて思っていたのに、いまいち力が湧いてこない…。そんなときは、無理せず、押上喫茶で、そっと小休止してみませんか。
