「マンモス展」の見どころのひとつである、最先端生命科学による「マンモス復活プロジェクト」。プロジェクトを手がける研究者に、お話を聞いてきました。
生命科学の最前線!マンモス復活プロジェクトとは?
今年の3月、ひとつの論文が発表された。その内容は、シベリアの永久凍土で発掘されたマンモスの細胞核が、2万8千年の時を超えて、マウスの卵子の中で再び生命活動の兆しを見せたというもの。4000年前に地球上から姿を消したマンモス。絶滅した生命が、現代に復活する可能性を示した研究発表に、世界中から驚きの声があがった。
論文を発表したのは、近畿大学生物理工学部と先端技術総合研究所を中心とした研究チームだ。現在、日本科学未来館で開催中の「マンモス展」では、数々の冷凍標本などとともに、彼らが研究を進めている「マンモス復活プロジェクト」についても紹介。生命科学研究の最先端を垣間見ることができる。
マンモスを蘇らせる。本当にそんなことが可能なのか?研究チームの一員である、三谷匡教授はこう語る。「1997年に世界で初めてクローン羊が生み出されました。つまり、体のどこかの細胞さえあれば、クローン技術で個体をつくりだすことができると証明されたのです。それがきっかけとなって、絶滅動物の復活に向けた研究が世界中で始まりました。ただ、長い期間にわたり自然環境下に晒されていた動物組織では、細胞もその中にあるDNAもボロボロです。“複製する”という現在のクローン技術だけでは、個体の復活はほぼ不可能なんです。だから私たちは、全く新しいアプローチを計画しています。DNAの合成技術やAIを駆使して、マンモスの細胞そのものをつくってしまうのです」。
永久凍土に眠っていたマンモスのDNAを1冊の本とすると、その本はページが抜けていたり、文字がかすれて読めない状況なのだという。そのようなボロボロの本に書かれた生命の設計図を使っても、複製などできない。けれど、たとえ状態が悪かったとしても何冊もの本があれば、それらの文字を読み取っていくことで完璧な状態の本を新たに合成することができるというのだ。プロジェクトは現在、できるだけ多くの細胞サンプルを集め、そこからDNAなどの各種情報を読み取る作業を進めているところだという。
マンモスはいつ復活するのか?
マンモス復活は、決して夢物語ではない。だとしたら気になるのがその時期だ。シベリアの発掘にも同行した加藤博己教授は、こう答えてくれた。「現在の研究段階では“いつかは復活する可能性が高い”、としか言えません。まだまだ越えるべきハードルはいくつもあるのです。遺伝情報をつなぎ合わせて、新たな細胞を合成する技術もまだ確立されているわけではありませんし、たとえ細胞がつくれても、受精卵を育てるための子宮も必要です。復活後に生態系に与える影響も考えなければなりません。もちろん、倫理的な問題もあります。マンモスを復活させるということ自体の是非について、議論をしなければならないことが山ほどあるのです」
マンモスが歩く姿を見られるのは、10年後かもしれないし、100年経っても実現しないかもしれない。けれど情熱をもって研究を進めていけば、その日はやってくると信じて、彼らは研究を進めている。“空を飛びたい”、“月に行きたい”、かつて研究者たちが抱いたその強い想いは、多くのイノベーションを生み出した。“マンモスを復活させたい”という願いも同様だ。この研究の過程から生まれた技術が、医療や環境保護など、さまざまな分野に応用されていくはず。生命科学が、私たちの未来をどう変えていくのか?「マンモス展」を通じて、いろいろな想像が広がるはずだ。
近畿大学生物理工学部の三谷匡教授(左)と先端技術総合研究所の加藤博己教授(右)。「マンモス復活プロジェクト」は、さまざまな分野のエキスパートの力を結集して研究が進められている。
企画展「マンモス展」−その『生命』は蘇るのか−
お台場 日本科学未来館で11月4日(月・休)まで開催中!
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火※7月23日(火)~8月27日(火)は無休、10月22日(火・祝)は開館
当日券:大人1800円(19才以上)、中人1400円(小学生~18歳)小人900円(4歳~小学生未満)
展示詳細、音声ガイド、グッズ情報など詳しくはオフィシャルサイトへ
https://www.mammothten.jp
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