草間彌生 / 宮島達男 - 森美術館 STARS展[アートは六本木]


「70年におよぶ創作活動を振り返る」

 現在91歳の草間さんのアーティスト活動期間は、じつに約70年におよびます。膨大な作品群のなかで、どこを切り取って紹介するか。作品選びには頭を悩ませました。結果、1950~1960年代の発表当時、ミニマリズムやポップ・アートの先駆者として欧米で高い評価を得たニューヨーク時代の初期作品、世界的に再評価が高まった1990年代の作品、そして現在まで続く最新作の絵画シリーズと、大きく3つの時代に分け、それぞれ重要な展覧会の出品作や特徴的な作品などを展示することになりました。ゆるやかに年代順に作品を配置することにより、細かな模様の反復や無数の突起といった一貫したテーマを追求しつつも、変化の変遷を見て取ることができると思います。とくに近作では、抽象的なモチーフのなかに人の顔など、これまで描かれてこなかった具象表現が加わっていることに注目していただきたいですね。また、『わたし大好き』という自著のタイトルからわかるとおり、自分の人生の喜びや悲しみを作品に投影してきた草間さんの究極の自己愛が、人類愛へと昇華していることも感じられるでしょう。

 アーカイブコーナーでは、これまでに13冊発表されている小説や詩集も展示されています。幅広い知識と深い教養を備えた草間さんは小説家としても名手。多面的でディープな部分に触れることができるので、これを機に一読をおすすめします。

 「カボチャ」や「ドット」といったカラフルでポップな作品だけでない、全方位的に桁違いの才能と創作力を持ったアーティスト草間彌生の全貌をご覧ください。

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手前の立体作品左から《ピンクボート》(1992年)、《無題(金色の椅子のオブジェ)》(1966年)、《トラヴェリング・ライフ》(1964年)。綿を詰めた無数の突起のある布で物体を覆った「ソフト・スカルプチュア」シリーズ。奥の絵画作品左から《天上よりの啓示(B)》(1993年)、《芽生え》(1992年)。ともに細かな模様の反復を描いている。

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担当キュレーター 德山拓一

草間彌生

1929年長野県松本市生まれ。1957年渡米。1960年代にはニューヨークのアート・シーンにおいて注目される。1973年帰国。1998年ロサンゼルス・カウンティ美術館とMoMAの共同企画による個展を皮切りに世界各地で大規模個展を開催。現在も勢力的に制作を続ける。
 

Museum Goods

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女たちの群れは愛を待っているのに、男たちはいつも去っていってしまう(2009年)/プレート

サイズ:260×206mm/1万4300円(税込)
©YAYOI KUSAMA


LEDで灯されるデジタルの数字に命が宿る空間へ

 宮島さんは、LEDのデジタルカウンターを使ったインスタレーションや立体作品を中心に制作を行うアーティスト。作品の核となるのは、「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という3つのコンセプトです。このことを頭に入れて鑑賞していただくとより理解が深まり、さらに自分なりの解釈や想像がぐっと広がるのではないでしょうか。

 最新作の《時の海̶東北》は、東日本大震災で亡くなられた人々への鎮魂と、大災害の記憶を後世に伝え、さらに未来の希望につなげるためのプロジェクト。水を張ったプールのなかで発光する青と緑のデジタルカウンターは9から1までの数字を順番に表示し、0(ゼロ)は表示されずに暗転します。表示スピードは一般参加者によってひとつずつ設定されているため、それぞれ速度が異なります。暗転する0は死を、新たに点灯される数字が生を意味し、全体で命そのものの輪廻を表現しています。最終的に3000個のLEDカウンターを集め、“命の光”として東北に設置することを目標としているこの作品は現在進行中で、展示されているのは、719個が集まった現在の最新の様子。今後はLEDの色を青と緑だけでなく、パープル系なども加えて豊潤な海の色に近づけていく予定とのことで、目標に向けて変化を続ける本作品の現状の姿は、まさにいましか見られないものとなります。実際の水流の音を聞きながら動き続ける数字を眺めていると、さまざまな思いが胸に浮かび上がることでしょう。ベンチに座って、じっくりご鑑賞ください。

metro121_sp_P12宮島展示サシカエ画像_350dpiトーン調整.jpgデジタルの数字ひとつひとつが命に見える《「時の海ー東北」プロジェクト(2020 東京)》(2020年)。参加者がカウンターの速度を設定する様子などが収められた記録映像も上映。ほかに、理論上30万年以上の時を刻むことができる《30万年の時計》(1987年)、一元論/二元論を意味する《Monism/Dualism》(1989年)など、海外デビュー時の作品も展示。

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担当キュレーター 近藤健一

宮島達男

1957年東京都生まれ、茨城県在住。1988年ベネチア・ビエンナーレの若手作家部門「アペルト88」にて《時の海》を展示し国際的な注目を集める。1997年ロンドンのヘイワード・ギャラリーをはじめ、世界各地で個展を開催。1999年ベネチア・ビエンナーレ日本館代表。


Museum Goods

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感温グラス

サイズ:85×φ83mm/容量:300ml/1980円(税込)
©Tatsuo Miyajima
水を入れると青と緑のデジタル数字が浮かび上がるグラス





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