奈良美智 / 杉本博司-森美術館 STARS展 [アートは六本木]


「影響を受けたロックから祈りに満ちた新作まで、奈良ワールドを堪能!」

 青森県弘前市で生まれ育った奈良さんは、県内に米軍基地があることから、FENラジオで小学生の頃から洋楽を聴き、そのレコードジャケットのカッコよさに憧れることがアートへと繋がっていったといいます。今回は、創作の原点ともいえる奈良さん所有のレコードジャケットやCDジャケットを、作家のさまざまなコレクションとともに展示しています。知っている名前を探して共通点を確認するだけでなく、あえて知らないアーティストの名前を覚えて帰り、聴いてみるのも楽しいかもしれません。

 1980年代の活動初期から描かれている天使や月といった代表的なモチーフ、可愛いさと意地悪さ、無邪気さと神聖さといった両義性をもつ子どものポートレートは、紙袋や印刷物の裏などに色鉛筆で描かれたドローイングからペインティング、小屋状のインスタレーションまで、さまざまな表現となって展示されています。本展では、1980年代初期の作品から最新作まで36点を公開しており、2011年の東日本大震災以降、「作家としての自覚と覚悟が生まれた」といい、近年では「大きな文化のなかではなく、小さな文化のなかで生きていたい」という奈良さんの作品の変遷を見て取ることができるでしょう。とくに最新作《Miss Moonlight》(2020年)では、女の子は目を閉じ、静かな表情を浮かべています。何色も塗り重ねられた深い色合いのこの作品は少し奥まった場所の高い位置に展示され、見上げていると、自然に祈りの心のようなものが生まれます。逆にあえて低い位置に配置された絵画もあり、こうした奈良さんならではの空間構成の妙味も堪能していただきたいですね。人形や小物、書籍など奈良さんの個人コレクションの展示に加えて、小屋状の《Voyage of the Moon(Resting Moon)/Voyage of the Moon》(2006年)内部にあるコレクションが並んでいる様子は、奈良さんのスタジオの雰囲気そのもの。じっくり楽しんでください。

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右から、内部に人形や小物、書籍などさまざまなコレクションとともにドローイングなども飾られている《Voyage of the Moon(Resting Moon)/Voyage of the Moon》。反対側の窓から中を覗き込むことができる。新作の《Miss Moonlight》の前にはベンチが置かれ、静かに作品と対峙することができる。手前右は《Submarines in Girl》(1992年)。

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担当キュレーター 椿 玲子

奈良美智

1959年青森県弘前市生まれ、栃木県在住。1980年代後半に作家活動を開始し、1998年~2000年はドイツを拠点に活動。帰国後、シカゴ現代美術館等での個展により欧米での評価が高まる。2001年に国内初の大型個展、2015年にアジア・ソサエティ香港センターで個展を開催。

 

Museum Goods

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The Little Star Dweller*(左)、Miss Moonligh(右)/ジグソーパズル

1000ピース 完成サイズ:735×510mm/3850円(税込)
※本展には展示されていません。
©Yoshitomo Nara


「初美術館収蔵作、日本初展示作品、初監督映画同時公開」

 杉本さんの初美術館収蔵作品は、本展で展示されているジオラマシリーズの《シロクマ》(1976年)です。当時は毎週木曜日に新人作家の作品持ち込みを受け付けていたMoMAにポートフォリオを提出したところ、写真のチーフキュレーターだったジョン・シャーカフスキーに見出され、500ドルの購入を提案されたそう。ところが経理部に値切られ、半額の250ドルが支払われたという逸話が残されています。本展アーカイブのコーナーをよく見ていただくと、1974年にシャーカフスキーが日本の写真の展覧会をキュレーションしていたことがわかります。その2年後に杉本作品を見て、彼がどのように驚き、興味を持ったのかを想像するのも楽しいですね。

 “回転を意味する”「レボリューション」シリーズは、今回、日本初公開となります。これは“1万年前の人間が見ていたであろう風景”を視覚化するため、空と海が画面を二分する「海景」シリーズを世界各地で撮影しながら、それと並行して撮影されていたものです。画面を90度回転させるだけで、水平線だったものが突然“地球の側面”に見えてきます。私は10年ほど前、ニューヨークのスタジオでプリント中のこの作品を偶然拝見したのですが、その際「これは宇宙の写真ですね」とお話ししたことを覚えています。

 宇宙といえば、森羅万象を表現する場として杉本さんが長年取り組んでいる《小田原文化財団 江之浦測候所》。この庭に置かれた石や門など、それぞれに秘められた物語を聞きながら時間を過去に溯ることで、その一つひとつがエネルギーを放ち始めます。意味を重視するコンセプチュアル・アートとも繋がる体験です。この場を映像作品として見せることを提案した結果、無声映画のような杉本博司初監督作品ができあがりました。直筆の題字や自慢の歌声もあわせてお楽しみください。

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約20年の構想を経て2017年に開設された《小田原文化財団 江之浦測候所》にて撮影された初監督作品《時間の庭のひとりごと》。木の葉や雨粒のディテールからドローンによる俯瞰撮影までを、大スクリーンで鑑賞できる映画。撮影は鈴木心。田中泯による“場踊り”や、偶然来日していたオレリー・デュポンのダンスも見どころ。

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​担当キュレーター 片岡真実

杉本博司

1948年東京都生まれ。1970年渡米しロサンゼルスで写真を学び、1974年ニューヨークに移住。創作活動は写真を中心に、建築、彫刻、古典芸能、舞台芸術など多岐にわたる。1995年メトロポリタン美術館、2005年森美術館など個展多数。2010年紫綬褒章受賞。2017年文化功労者。


Museum Goods

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未露光原板/クリアファイル

サイズ:A4/1100円(税込)/
右端に8×10フィルムのような切込みがついた、透明度の高いプラスチック素材のクリアファイル。
©Hiroshi Sugimoto





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