オーストリアの人気作家R.ゼーターラーのベストセラー小説を作者自らが戯曲化した舞台「キオスク」が、2月11日より、東京で幕を開ける。昨年12月から1月にかけて上演され大好評を博したリーディング版に続き、早くも上演される期待の感動作だ。本作に出演する元宝塚歌劇団トップスターで、退団後は数々の秀作舞台への出演で高い評価を得ている女優・大空ゆうひが、作品の魅力や舞台への思いを語る。
ナイーブな青春のほろ苦さと輝き、
世情が不安な時代にも”生きる“ 力強さを感じていただけたら
「最初に台本を読ませていただいて、不思議な世界観がベースになっている物語の奥に、何かたゆたっている“強い生命力”があるなと感じました。主人公が生きる時代は厳しい状況下だけれども、それに負けないくらいの美しい描写が輝いています。そういう不思議なバランスのようなものが魅力的な作品だなと、この世界に生きてみたいなと思いました」
舞台「キオスク」に出演する大空に、この作品と最初に出合った感想をたずねると、彼女らしい誌的な言葉が返ってきた。
物語の舞台は、ナチスドイツが台頭するオーストリア。不穏な空気が流れる激動の時代に、ウィーンのキオスク(タバコ店)で働くことになった17歳の青年フランツ(林翔太)の、さまざまな大人たちとの交流や初恋を通じた波乱の成長と、彼がウィーンで出会った愛するものを通して、政治や世情と向き合う物語だ。台本には、登場人物によるあふれるほどの珠玉の言葉がちりばめられている。その中で大空がいちばん印象に残ったのは、17歳のフランツの言葉だという。
「17歳というと、少年から青年になる時期で、とてもナイーブな感受性を持っています。さまざまな大人との出会いを通してフランツの目で見えるものは、ハッとするほど新鮮で、その言葉に強く惹かれます。お母さんとの葉書(手紙)のやりとりも素敵です。母親に送り続ける葉書の文章が少しずつ移り変わっていくのですが、その言葉からも彼が急成長していることを感じます。語り過ぎていない言葉もまた素敵なんです。あと、キオスクの店主トゥルスニエク(橋本さとし)は、あまり彼に多くを語らないのですが、その言葉には“生きる”力強さが内包されています」
17歳といえば、大空は宝塚歌劇団で初舞台を踏んだ頃だ。
「私はフランツと違って、ボーっとしていました(笑)。その年代は、まだ弱いし脆い存在。エネルギーはあるけれど、いい意味で傷つきやすかったりして。この物語は、そこが本当に魅力的だと思います」
戦時下など不安な世情の時代を生きる人物を演じてきた経験もあるが、コロナ禍でもある今回は、その時代を生きることにも意味があると語る。
「若い頃は、演じるためにいくら資料を見ても、戦争などでの身に染みる思いのようなものを表現することが難しかった。いろいろな舞台を通して経験したことに加えて、いまは日々生きていて何が起こるかわからない時代でもありますので、より表現できるものがあるかなと。いまこそ、この作品を上演する意味があるのではないかと思います。劇中さまざまな役を演じさせていただく私たちが、フランツが出会う状況や時代というものを表現していって、時代のにおいや空気感をつくっていけたらいいですね。元々薄い顔と言われますが(笑)、今回こそ素の顔を全く見せずに、いろいろな顔に変化することを楽しめたらと思います。幸せなことに、毎回、舞台では何か持って帰れるものがあるのですが、今回は持って帰るだけではなくて、自分もちゃんと何かを置いてくることができる役者でありたいですね」
予定していた出演舞台がコロナ禍で2公演ほど中止になった。そして、何もできなかった期間が明けて、ようやく舞台ができたときには、心の底から舞台が好きな自分を再発見したという。
「やっぱり舞台で生きられること、芝居をしてお客さまに見ていただけることって、こんなにも楽しく幸せなことだったんだと、はっきりとわかりました。一度故郷を離れて久しぶりに帰ったら、その素晴らしさが見えたような感じです。むしろ日常よりも舞台で誰かを生きているときのほうが、私は生きている感じがするんです(笑)。今回の『キオスク』も皆さまに印象を残せる舞台になったらいいなと思っています」
大空ゆうひ
Yuhi Ozora
6月22日生まれ、東京都出身。宝塚歌劇団宙組トップスターとして数々の話題作に出演。2012年『華やかなりし日々/クライマックス-Cry-Max-』で同歌劇団を退団。以降、舞台を中心に活躍中。近年の主な出演作に、映画『カイジ ファイナルゲーム』(20 )、ドラマ『家政夫のミタゾノ』(20 )、コンサート『sound theaterⅩ-Ⅰ』(20)、舞台『銀河鉄道の父』、朗読劇『日の名残り』(いずれも20)、『鎌塚氏、舞い散る』(19)、『陰陽師 安倍晴明~晴明 隠された謎…~』(19・18)、『まさに世界の終わり』(18)などがある

- STORY -
舞台はナチスドイツが台頭する1937年のオーストリア激動の時代に
大人への階段を駆け上がる少年フランツの物語
1937年、ナチスドイツが台頭するウィーンに、自然に恵まれた湖畔で母親と二人暮らしだった17歳のフランツがやってくる。母の経済的後ろ盾の男性が急死し、働きに出されたのだった。
フランツはキオスク(タバコ店)の住み込み見習店員となり、母の知人である店主からさまざまなことを学ぶ。また、店の常連客である精神分析学者フロイト教授との出会いは、無垢なフランツの心にさまざまな影響をもたらし、教授は彼に人生を楽しみ恋をするよう忠告を与える。
ボヘミア出身で謎めいた年上の女性アネシュカに心を奪われるフランツ。人生に関する名言が印象的な最晩年のジークムント・フロイト。ウィーンでフランツの自立の扉を開くタバコ店の店主・オットー・トゥルスニエク。
時代の激動にのみ込まれていくオーストリア・ウィーンで青春の炎を燃え上がらせながら、厳しい世情のなかフランツは思いもかけなかった経験を重ねていく…。
- CAST -
林 翔太、橋本さとし、
大空ゆうひ、上西星来(東京パフォーマンスドール)、吉田メタル、堀 文明、
一路真輝、山路和弘
作:ローベルト・ゼーターラー
翻訳:酒寄進一
演出:石丸さち子
『キオスク』
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
会期:2月11日(木・祝)~21日(日)
チケット発売中
詳しくはオフィシャルサイトへ
https://www.kiosk-stage.com