illustration: Haruka Toshimitsu edit: Kohei Nishihara, Shiori Sekine(EATer)

漢方のキホン[漢方のキホン]


 どこか調子が悪いとき、心身に不調が感じられるとき、漢方を取り入れてみるのも、ひとつの手かもしれない。漢方薬はどんな効果があるの? 漢方の考え方って?まずは選択肢のひとつとして、漢方の基本を知ることから始めよう。


内なる自分の声に耳を傾ける。
知っておきたい漢方の考え方。

 鍼やお灸、漢方薬。なんとなく見聞きしたことがあるこれらは、「漢方」の考え方のもとに行われる治療法だ。薬局やドラッグストアでも漢方薬は手に入る。けれど、漢方がどんなものなのかをきちんとわかっている人は、どれくらいいるのだろう? 日本東洋医学会理事の田原英一先生は、次のように解説してくれた。

 「いちばんの特徴は、五感を使って診ることかもしれません。まずは、患者の住環境や生活習慣などを細かく聞く。それから肌に触れたり、音を聞いたり、匂いを嗅いだりと、さまざまな診察を経て不調の原因を探っていきます。たとえば以前、腰痛に悩む方を診察しました。話を聞いてみると、暑いからスイカをたくさん食べたと話されていたんです。スイカは身体を冷やすものですから、もともと関節が弱い人であれば、身体が冷えて血管が収縮することで血流が滞り、痛みが出てしまうこともある。このように、痛みの原因がわかれば、体を温める漢方薬を処方したり、少し運動をして新陳代謝を高めましょうか、といった話ができます。もちろん、場合によっては痛み止めなどを処方して腰痛を和らげるという判断もしますが、生活を見直したり、漢方薬で整えてあげたりすることによって、症状が和らぐこともある。もっと言えば、痛みをとるだけではなく、健康な状態を長く保つことにもつながりますよね。このように漢方では、身体全体のバランスを整えて症状を治していくことを大切にしています」

 健康な状態でいるには、まず日頃の生活習慣を振り返ることが重要。田原先生は、「内なる自分の声に耳を傾けないといけない」と話す。

 「頭痛がするし、めまいもする、食欲もない…といったように、病気と診断されなくとも、さまざまな不調を感じている人は多いと思います。その一つひとつを治すために病院に通うのは大変です。でも、基本原則として『ごはんを食べているか』『よく眠れているか』『排泄ができているか』、そして、『楽しく生きているか』ということを意識して改善していけば、それだけで元気が出てくるかもしれません。この原則を私は『食う、寝る、出す、遊ぶ』と言っています。このバランスが崩れれば、体調が悪くなったり、メンタル面の症状が出てしまうこともあります。まずは、自分の身体の声を聞いてみる。うまく聞こえない、それだけでは難しいという人は、私たち医師に相談にいらしてください。人間の身体には、“治す力”が備わっています。これを自然に引き出してあげる。それが漢方の考え方です」

 漢方を知ることは、自分の身体について知ることにもつながる。いきいきとした毎日のために、漢方の考え方を役立ててみてはどうだろう。

 

一般社団法人日本東洋医学会 理事
田原英一先生

漢方専門医。1991年に富山医科薬科大学医学部を卒業後、砺波サンシャイン病院副院長や近畿大学東洋医学研究所助教などを経て、 2007年より飯塚病院漢方診療科へ。日本東洋医学会、和漢医薬学会、日本内科学会など6つの学会に所属。2017年には「第68回日本東洋医学会 学術奨励賞」を受賞し、医学生向け書籍の監修も数多く行っている。






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