誰もが幸せに生きるには、正しい理解と適切なサポートが必要だ。以降のページでは、自分のみならず他者を思いやるうえでも大切なテーマについてご紹介。「知る」ことで、みんなにやさしくなれる。そのための一歩を踏み出してみよう。
KEY SESSION
還暦パパ・中本裕己記者&男性学・田中俊之先生と
とことん語る「男性育休」
〜職場にもたらす多様性と可能性〜
男性の育児休業取得率は、およそ17%。1990年代から比べると着実に上昇している一方で、まだまだ課題もありそうだ。56歳ではじめて父になり、3歳児の子育てに奮闘中の中本裕己さんと、男性学を研究する田中俊之先生とともに、男性育休のこれまでを知り、これからについて考えてみたい。
写真右)
大妻女子大学
人間関係学部 准教授
田中俊之先生
武蔵野大学大学院にて社会学の博士号を取得。大正大学人間学部の准教授などを経て現職。ジェンダー論、男性学、社会調査方法論を研究。主な著書に『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ』(KADOKAWA)など。
写真中央)
産経新聞
篠原那美記者
モデレーター
写真左)
産経新聞社
夕刊フジ報道部
中本裕己記者
関西大学社会学部を卒業後、産経新聞社に入社。大阪編集部や芸能デスクなどを経て、夕刊フジの編集長として活躍。芸能、健康・医療など、さまざまな分野の取材・執筆を担当した。現在は夕刊フジ、『健活手帖』の編集に従事。
男性育休を当たり前にするために
知っておきたい課題とメリット
このセッションでは、「男性育休」を取り巻く課題について、田中先生の解説や中本さんの経験談を交えながら議論した。
なぜ男性育休が必要とされているのか? 田中先生は、主に2つの理由があると話す。「ひとつ目は女性の社会進出が進んだこと。ふたつ目は、日本の産業が停滞して国の経済力が下がり、給与水準が下がったことです。女性が働きやすくなっているポジティブな変化とともに、共働きでなければ食べていけない実情もある。だからこそ子育ても分担する必要があり、男性の育休取得が推奨されてきているのです」。
2021年に育児・介護休業法が改正され、育休制度を活用しやすくなった。56歳で第一子が誕生した中本さんは、妻と分担して子育てに励んでいるという。「息子は早産児として生まれ、妻も息子も産後は集中治療室に入っていたこともあり、妻は療養しながらの育児となりました。分担して子育てすることで、両親それぞれの愛情を受けて育ってくれていることがうれしいですね」。対して田中さんは、「中本さん一家の出産が特殊だと思わないでほしい」と続ける。「どんな例であれ出産は命懸け。産後8週間ほどは『産褥(じょく)期』と呼ばれ、出産後の身体が元の状態に戻るまでには時間がかかります。男性から育休の取得期間を相談されたときは、2カ月を目安に伝えています。2カ月取れば、奥さんのサポートもできますよね」。
政府は、男性育休の取得率を2025年までに50%にするという目標を掲げている。男性育休の取得には、まだまだ課題があると田中先生は指摘する。「世代の問題が大きいです。いま職場で上司の立場にいる50〜60代は、“女性は結婚・妊娠・出産で退社することが当たり前”という時代を生きてきた人たちです。だからこそ、“子育ては女性に任せればいいのに、男には出番なんかないだろう”といった価値観を変えることが難しいのだと思います」。
職場では理解が得られにくいという課題がある一方、男性の育休取得にはさまざまなメリットがある。セッションの後半では、男性が育休を取得することのメリットについて、個人と組織の観点から挙げ、3人が意見を交わした。その詳細は、ぜひアーカイブ動画で見てほしい。性別に限らず、必要なときに必要な休業期間を設けることと、組織としてそれを叶えるためのサポートをすることが大切。このイベントを通して、男性育休への理解を深めてみよう。

『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました
生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記』(ワニ・プラス)
突然コウノトリが運んできた宝物は、誕生までの道のりも、誕生後の道のりも険しかった。コロナ禍で乗り越えた命がけの出産や、その後の子育て記録、シニア子育てならではの賢い家計術や人生観の変遷まで、中本さん一家のさまざまな変化が綴られている。
アーカイブ視聴はこちらから
https://www.sankei.com/special/femcareproject/event/2024-mar/
point 1
男性育休の取得率は26年で約140倍に!?
1996年
女性=49.1%/男性=0.12%
↓
2022年
女性=80.2%/男性=17.13%
出典:厚生労働省「雇用均等基本調査」

まさに90年代を駆け抜けてきましたが、男女雇用機会均等法が施行されてからも、古いしきたりが抜けない業界が多かったと思います。それでも変えなければならないと模索して30年ほどが経ち、時代は変わってきたなあと感じます。
point 2
しかしまだ少ない育休取得の3つの壁
①職場に認めない雰囲気がある
②周囲からの評価に影響が出る
③職場に迷惑をかけたくない

北欧で男性の育休取得率が高いのは、育休を経て戻ってきた社員が不利な扱いを受けていない現実がとても大きいです。育休の取得にかかわらず、いつでも平等に評価をするように、上司や会社の意識改革が求められます。