Text=Yuho Tanaka, euphoria factory Photography=Kohei Komatsu, Hinano Kimoto, Shota Matsushima  Japanese calligraphy=Masayo Ohta

「道」の世界を知る[踏み出そう、新しい「道」へ。]


 華道、書道、茶道―。伝統的な習いごとが気になるけれど、何だか敷居が高いかも。そう感じているあなたへ。一歩踏み出せば、ちょっぴり背筋が伸びた新しい自分に出会えそう。新年の凜とした空気のなかで始めたい、知りたい「道」の世界。


「道」の世界を知る

 店先を彩るいけばな。子どもたちの書き初め。初釜や初稽古のニュース。お正月は、何気ない日常のなかで芸道や武道に触れ、その魅力を実感したり興味を持ったりする機会も多かったのではないだろうか。日本の年中行事とも密接な関わりをもつ「道」の世界を紐といてゆこう。

 そもそも「道」とは何か。『大辞泉』には「専門を究めて一派を立てた技芸」「芸術・技芸などのそれぞれの分野。また、その精神真髄」とある。知識や技の研鑽にとどまらず、精神面でも深く関わるのが、その道を究めることなのだろう。

 それぞれの歴史をたどると、茶道や華道、香道などの芸道の多くは人々の精神性とも関わりが強い宗教儀礼から芸術へと変化してきた。武道は実戦で用いた戦法が、礼節や精神修養を重んじる「武道」に発展したものが多い。相手や道具を敬う、自分の心と向き合うといった精神面は、道の世界を理解するうえで欠かせない要素といえそうだ。

 取材で訪れた教室でも、その道に親しむ効果として「心が落ち着く」「集中できる」「気持ちがすっきりする」とメンタル面での変化を挙げる指導者や生徒はとても多かった。「その瞬間に集中する、マインドフルネス的な効果がある」との声も。慌ただしい日々のなかで、「道」の存在が大きな心の支えとなっているようだ。

 参加者たちの美しい姿勢や所作も、どの教室でも目を引いた。芸道も武道も、長い歴史のなかで磨かれた技や型、作法には無駄がなく、老若男女を美しく見せてくれる。それは稽古だけでなく、日常の立ち居振る舞いにも現れるはずだ。

 芸道では、都会で生活していると忘れがちな季節の変化を感じられるのも大きな魅力だろう。四季とともに手にする花材や茶器、茶菓の種類が移り変わってゆく。美しい文字が身につけば、季節ごとにあいさつの手紙をしたためたくなりそうだ。

 稽古の場は、人間関係も豊かにしてくれる。そこには仕事や家庭だけの生活では知り合えない、同じ「道」を歩む老若男女さまざまな仲間との出会いが待っている。日本の伝統文化を身につけることで、訪日外国人との交流や、よりよい異文化理解にもつながるだろう。

 このように心を整え、技を磨き、仲間と出会う場として古くから続いてきたさまざまな「道」。その門戸は多くの人に開かれている。この特集で気になった道があれば、ぜひ新しい一歩を踏み出してみよう。


さまざまな「道」


【「道」で得られるもの】
・心が整う
・姿勢と所作が美しくなる
・礼儀作法が身に付く
・四季を感じられる
・国際交流にも役立つ


柔道 〈武道〉
明治時代、嘉納治五郎が武士の格闘技術「柔術」に身体と精神を修練する要素を加えた「柔道」を創始。今では世界的な人気競技となっている。

剣道 〈武道〉
柔道と同じく、元は武士の戦闘手段であった剣術に精神修養や礼儀を重んじる意識が加わり、明治時代に剣道が生まれた。日本刀を模した竹刀で試合をする。

合気道 〈武道〉
20世紀初めに創始された、比較的新しい武道。相手の力を自分の力として利用する「合気」を重視し、攻撃より防御の技を中心に構成されている。

空手道 〈武道〉
手と足での打撃中心の武術。中国から琉球に伝わり発展した拳法「唐手」がルーツとされる。試合をせず1人で技を繰り出す「型」の演技もある。

弓道 〈武道〉
古くから狩りや戦いで使われた弓矢だが、鉄砲の普及後は武士が自己修練のため的を射る「弓術」が広がり、明治時代に統一ルールをもつ弓道が生まれた。

華道 〈芸道〉
「いけばな」とも呼ばれる日本発祥の芸術。仏事での献花の習慣などを起源に室町時代に確立され、小原流、池坊、草月流など多くの流派がある。

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茶道 〈芸道〉
湯を沸かし茶をたててふるまう行為と茶道具、茶室などを総合的に味わう。茶を用いた儀礼は平安時代から存在し、現在の様式は安土桃山時代に確立された。

書道 〈芸道〉
筆と墨を使い、文字を美しく表現する芸術。中国に起源をもち、日本でも漢字と仏教の伝来以降、独自に発展した。正しく整った字を書く「習字」も習い事として人気。

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香道 〈芸道〉
香木を焚いた香りを文学や季節などと結びつけて楽しむ日本独自の芸術。香は飛鳥時代に寺院で使われ始め、香道として発展しながら貴族から武家、庶民に広まった。

※歴史や起源には諸説ある。





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