体験会&教室レポート③
香道
嗅ぐのではなく、聞く。一瞬で消える香りに意識を研ぎ澄ませ、その余韻に浸る。感覚と記憶をつなぐ、静かな文化体験。
静かに、豊かに、
香りの世界に浸る。
目に見えず、すぐに消えてしまう香り。その一瞬に意識を集中させる「香道」は、実は茶道・華道と並ぶ日本の三大芸道の一つともされる。歴史は古く、仏教伝来とともに香木が入ってきた飛鳥時代から始まり、室町時代に武家文化の中で洗練されていった。現代の生活ではあまり接する機会のない香道だが、その風雅な世界に一度は触れてみたい。そう思い立ったなら、まずは香りの専門家のもとへ足を運んでみよう。
お香や香木の専門店である香源では、各店舗で香りにまつわる体験会を開催している。体験の前座として用意されている「ミニ講義」では世界のお香文化の知識や、香木の産地クイズなどを通して、「香」の魅力を楽しくわかりやすく紹介してくれる。「講義の内容はシーズンによって切り替わるので、繰り返し参加しても楽しんでいただけると思います」と、コンシェルジュの橋口大輝さん。参加者の年齢層は子どもから高齢者まで幅広く、歴史が好きで興味をもつ人も多いという。最近では海外からの旅行者も受け入れている。
体験メニューは開催日時によって匂い袋作り、練香作り、香木焚き比べなどから選択でき、今回は香道でも使われる香木の香りを「聞く」体験ができる「香木焚き比べ」に参加。まず香木の代表格である白檀、沈香、伽羅の香りを比べる。「香水やお香、ルームフレグランスなど現代でも〝香り〟自体は身近ですし、生活の中に取り入れている方も多いですよね。ただ原料のことを知ると、もっと面白くなりませんか?」と、橋口さんが、それぞれの特徴や歴史上の背景を丁寧に教えてくれる。香木は近年、産地の治安問題などで採取が困難になり、希少価値が高まっているという。
体験の最後は「源氏香」に挑戦。源氏香はお香を焚き分けて香りを当てる伝統的な「組香」のひとつで、5種類のランダムに焚いた香を聞き分け、『源氏物語』の帖に当てはめた52通りの中から、組み合わせと順番を当てる。目に見えない香りだけに意識を向け、自分の内側に残る余韻をたどる体験は、香道ならではの静かな没入感に満ちている。
香道は特別な技よりも「感じること」を大切にする文化だ。正解を求めるのではなく、香りと向き合い、自分の感覚を確かめる。その体験こそが、香道の第一歩となる。

香炉の上部を手の平で覆い、わずかな隙間から香りを聞く。感覚と集中力が研ぎ澄まされるひととき。

「お香コンシェルジュ」として活動するスタッフが、わかりやすく説明してくれる。

源氏香の組み合わせを表した図形は、初心者には暗号のようだ。
香源 上野店
日本全国のお香・お線香約5000種類以上を取り揃える専門店。香り選びをサポートする「お香コンシェルジュ」が在籍し、店舗2階では貴重な香道具や香炉、原料標本を展示。「香」をテーマにさまざまな体験講座も実施している。
住 | 東京都台東区上野桜木1丁目10-16
休 | 月、火曜、年末年始
料 | お香体験5500円〜
電 | 03-3827-6666
https://okoh.co.jp/shop/uenosakuragi/
体験会&教室レポート④
合気道
合気道道場って、どんなところだろう。少し緊張しながら門を叩くと、和気あいあいと修練に励む元気な門下生たちの姿があった。
女性も始めやすい武道で、
心と体を整える。
12月初めの週末。麻布道場を訪ねたのは、ちょうど年に2回の昇段審査の日だった。受験者が指定された技を次々に繰り出す様子を、しばらく見学する。
受け身で畳に手をつく「パンッ」という音だけが時折、静まり返った道場に響いた。大声で気合いを入れたり、体を激しくぶつけ合ったりする場面もない。合気道は柔道や剣道と比べるととても静かで、流れるような動きが美しい武道だと感じた。
試験が終わると、どこか張り詰めていた空気は一転。指導者も生徒もなごやかに談笑し始めた。副道場長の髙橋直樹さんに、道場について聞いてみる。6歳から78歳までの60人ほどが通っているそうだ。「基本に忠実に、初心者には丁寧に、を心がけています」。基本的な動作と技が身に付くまではきめ細かく教え、わからないことがあれば全体稽古の後に個別指導。稽古後は全員でお茶とお菓子を楽しむ時間もあり、入門者の自己紹介や交流の場となっている。「道場が、ひとつのコミュニティーになっていると思いますよ」。道場に漂うあたたかな空気感は、そのためなのだろう。
2人1組で技をかけ合う「型稽古」をいくつか見せてもらった。華奢な女性が長身の男性を軽々と組み伏せる様子に驚かされる。合気道歴20年、五段の道場代表・関根万美子さんが「合気道はパワーではなく関節技や、体のしくみを理解することが大切。年配の人や、運動神経に自信がない人でも上達できますよ」と笑顔で教えてくれた。
入門して2カ月の女性は、数ある武道から合気道を選んだ理由や、その魅力について「技の型の美しさに惹かれて入門しました。まずは基本を身につけるのが目標ですが、稽古の帰りは気持ちがすっきりします」と話してくれた。入門9年目で初段の女性は会社を経営しており「慌ただしい日々のなか、道場へ来ると思考のデトックスになります。段位を上げるだけでなく、日常の心と体の安定、いわばウェルビーイングのために続けていますね」。修練に励みつつ、心身を整える場になっているようだ。
道場にいた人々は、背筋が伸びてきりっとした表情ながら、同時にやわらかな雰囲気をまとっていたのが印象的。道着に身を包んで体を動かしてみたくなる空間だった。

はじけるような笑顔が印象的な、道場代表の関根さん。

型稽古の様子。関節技を使うと、女性でも男性と対等に技をかけ合うことができる。

道場には老若男女、さまざまな人が集まる。
合気道 麻布道場
創設から48年の歴史をもつ合気道道場。稽古日程は基本的に平日夜と土日の昼で、月会費は一般1万2500円、別途入会金8800円が必要。鏡開き、合宿、演武大会などの年中行事もある。
住 | 東京都港区元麻布1-5-10 パシフィック麻布102
休 | 月曜・祝日(臨時の休みあり)
料 | 入会金8800円、月会費1万2500円
電 | 03-3449-6456
https://www.aikidoazabudojo.com/