2021年に発足したフェムケアプロジェクトでは、毎年3月8日の「国際女性デー」にあわせて情報発信に力をいれている。2016年に施行され、2026年3月末が期限となっていた女性活躍推進法が、さらに10年延長された今年、「未来」をコンセプトに特集を組んだ。女性のみならず、誰もが生きやすい社会の実現がより一層加速することを願う10年。私たちは、どんな10年を生きていきたいのだろう。「ありたい未来」を想像することで、必要なアクションがみえてくるかも。まずは、想像するところからはじめてみよう。
フェムケアプロジェクトとは
メトロポリターナを発行する産経新聞社が2021年10月に立ち上げたプロジェクト。女性特有の健康課題や働き方に関する情報発信を通じ、相互理解を目指すことをビジョンに掲げている。

無意識のうちにとらわれている社会の“当たり前”を俯瞰して捉えてみたら、もっと自由にありたい自分を想像できるはず。そのために大切なのは、“当たり前”を作った、これまでの社会構造を知ること。女性の社会参与の変遷を学び、のびのびと未来を描く力を養おう。
これからのキャリアやライフスタイルについて考える時、知らず知らずのうちに未来の可能性を狭めてしまっていることはないだろうか? もっと自由に、何にもとらわれずに自分の10年後を想像したい。そう思うなら「〝これまで〟を知ることがきっと役に立つ」と株式会社COTENの品川皓亮さん。その理由を、品川さんらが調査する女性の社会参与の歴史を辿りながら教えてもらった。
過去を知り、未来を考える。
「僕らCOTENが活動のテーマに掲げているのは、人文知と社会をつなげることです」と品川さん。
COTENのコンテンツといえば、歴史インターネットラジオ〈COTEN RADIO〉が人気。ほかにも、哲学や文化、政治といった人間のあらゆる営みを俯瞰し、考えること=人文知を軸に、多様なコンテンツを発信している。女性の社会参与の歴史をテーマにした音声コンテンツ〈gender inclusive〉もそのひとつ。トータルで20時間を超える、28のエピソードが公開(招待制)されていて、『女性の人生選択の不自由』や『日本の子育て支援制度とその構造的限界』などのテーマで、歴史調査をベースとした多角的な考察がなされている。
「コンテンツの目的は日本のジェンダーギャップを解消することです。なぜ日本では女性管理職が増えないのか? なぜ育児や介護といった無償労働はいまだに女性に偏りがちなのか? 日本が抱えるこうした課題の解決策は、社会構造を俯瞰することで見えてくる。〝これまで〟を振り返ることは、〝これから〟を模索するために重要だと考えています」
これは社会というマクロの課題解決だけでなく、個人というミクロの行動変容にも有効だ。なぜなら、私たちは知らず知らずのうちに社会規範の影響を受けているから。
「社会規範とは、ある時代や地域において、こう振る舞うのが相応しいと共有されている価値観のこと。この社会規範こそが、マクロにおいては社会変容を難しくしているし、ミクロにおいては、個人が自分らしい意思決定をする際の障害になっている。でも、社会規範は決して変わらないような普遍的なものではない。歴史を総覧すると、いかに移ろいやすく、不確かなのかが理解できます」
産業革命が変えた社会規範。
では例えば、男性は外で働き、女性は家を守るものという、女性の社会参与において足枷になってきた社会規範はいつ生まれたのか? 「現代につながる性別役割分業という規範に大きく影響を与えたのは産業革命です」と品川さん。「産業革命以前は、 生計を得るための仕事も家事育児も、家族みんなで手分けして行うことが普通でした。しかし、産業革命によって工場という働きに出る場所が生まれると、職住分離が進み、家の外での賃金労働を男性が、家事や育児といった家庭内労働を女性が担うようになります。当時の工場労働には筋力が必要だったため、男性が働きに出るほうが合理的だったんです」
日本でも明治時代以降にこうした社会規範が広がり、高度経済成長期に入ると、女性の本業は家事や育児だという社会の空気がより色濃くなる。
「社会規範が形成される背景にはさまざまな要因がありますが、ひとつにその時代の主要産業が影響しています。女性は家庭で、男性は社会で働くという性別役割分業は、経済を成長させていくうえで合理的と判断された面もあるのでしょう」
しかし、こうした男女の分業も江戸時代にまで遡ると様子が異なる。
「例えば、江戸時代の武家の男性は『家』を維持するため、子育ての責任者として自ら手を動かす事例もあったんです。庶民はもちろん家族みんなで家事育児をしていましたし、男性優位な規範はありつつも、男女の役割分担は近代とはまた違うバランスで成り立っていたようです」
知ることで自分と出合い直す。
こうした歴史をひとつ知るだけでも、現代の当たり前から解放され、心が少し軽くなるのではないか。なかなか埋まらない男女の賃金格差も、結婚や出産が今なお、女性の人生の最重要項目のように語られる風潮も、ある時代の社会規範によって生まれたもの。とらわれる必要はないのかもしれない。
組織やコミュニティで感じる小さなモヤモヤも、触れてきた社会規範が異なることに起因するケースが多々ある。自分のせいでも、相手のせいでもないと気づくためにも、歴史を俯瞰する力は大切だ。
「知ることで解放され、主観が変わるということは、自分自身と出合い直すことでもあります。それは、周囲の人や社会、そして世界と出合い直すことも可能にします。自ら意思決定し、未来を切り開くための力にもなるはずです」と品川さん。
私たちには自由にこれからを描くという選択肢がある。知ることはそれを力強く後押ししてくれるのだ。
女性労働力の推移(1900-1995年)

経済企画庁『平成9年国民生活白書』より、1900年~1995年までの女性労働力率を示したグラフ。1900年代前半は、女性の労働参加の割合は、諸外国より日本の方が高かったことが分かる。

品川皓亮さん
しながわ・こうすけ 1987年東京都生まれ。弁護士や女性のキャリア支援のスタートアップを経て、株式会社COTENにて歴史調査を担当。ポッドキャスト番組『日本一たのしい哲学ラジオ』パーソナリティー。今年2月に『資本主義と、生きていく。 歴史と思想で解き明かす「構造的しんどさ」の正体』(大和書房)を上梓。
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Gender Inclusive
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