知ることで広がっていく未来の可能性。それは自分の体においても同じこと。歳を重ねて起こるホルモンの変化や、女性特有の不調や病気について正しい知識があれば、10年後を見据えて今、できることが見えてくるはずです。
心身のケアは未来への第一歩。
「女性は絶えず、女性ホルモンの波に揺さぶられている生き物です」と産婦人科医の高尾美穂先生。それは男女の生物学的な違いに目を向けるとより理解しやすいという。
「女性ホルモンを分泌する卵巣は、初潮から閉経までの約40年間だけ働く臓器です。なので、卵巣が役目を終えると女性ホルモンはつくられなくなってしまう。一方、男性ホルモンを分泌する精巣は生涯働く臓器。加齢による減少も女性より緩やかです」
女性が直面する心身の不調は、女性ホルモンの変化が要因のひとつ。でも見方を変えれば、順調に年齢を重ねている証しでもあると高尾先生。
「なので、体の変化をネガティブに捉えすぎず、自分を労わるコツを身につけていくことが大切ですね」
例えばそれは、生理中は予定を詰め込まないといった調整ができること。自己実現の為にも重要だという。
「心理学者のアブラハム・マズローが説いた欲求5段階説では、頂点が自己実現欲求、基盤が生理的欲求、つまり心身が快適な状態となっています。つまり、なりたい自分になるには不調を見過ごさないことが重要なんです。それに体調を整えることは、突き詰めると、人生の限りある時間を大切に使うことでもある。生理痛で一日寝ているのは勿体ないでしょう? 未来の為にも今の体を知ることから始めてみてください」

高尾美穂さん
たかお・みほ 産婦人科専門医、医学博士。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者でもある。女性の心身の健康にまつわる著書多数。近著に『高尾美穂のオトナ世代のこころとからだ相談室』(扶桑社)がある。
女性ホルモンの分泌量と、
ライフステージ別にかかりやすい
病気や症状
《子宮頸がん》
子宮の入り口(頸部)に発生するがん。20代後半から罹患率が上昇する。主因はヒトパピローマウィルス(HPV)への感染。HPVはありふれたウィルスで、性交渉の経験がある女性の約80%が生涯で一度は感染するといわれている。感染しても多くの場合は免疫機能によりウィルスが排除されるが、一部ががんを発症させてしまう。初期は無症状であることが多いが、早期発見が有効なので定期検診が重要。感染予防のワクチンも推奨。
《乳がん》
乳腺にできる悪性腫瘍。初経が早い、閉経が遅い、出産経験がないなど、エストロゲンにさらされる期間が長いほどリスクが高く、日本人女性の約9人に1人がかかるとされている。罹患率は30代以降に増え、日本における発症のピークは40代後半と60代前半。初期はほぼ無症状だが、セルフチェックが大切。鏡に映したり、触ったりして、乳房や脇の下にしこりがないか、大きさや色形に変化がないか確認する習慣を持つとよい。
《更年期障害》
閉経を挟んだ前後10年が「更年期」。エストロゲンの分泌量がアップダウンしながら減っていく時期で、その際に現れる心身の不調が「更年期症状」。異常発汗やほてり、イライラ、不安感、不眠、手足の冷えなどで、女性の約60%が不調を感じる。そのうち約30%に日常生活に支障をきたすほどの重い症状が現れ、はっきりとした他の原因がない場合にそれを「更年期障害」と呼ぶ。更年期症状は重大な病気と症状が似ていることも。自己判断せずに病院を受診することが大切。
《月経困難症》
生理中に起こる下腹部痛や腰痛、頭痛などが日常生活に支障をきたす状態のこと。生理による体調不良で仕事を休む、または実際に休まずとも、できれば休みたいと思う状態も生活に支障をきたしていると言える。原因はプロスタグランジンの過剰分泌や冷え、ストレスなど。子宮内膜症などが原因の場合もある。閉経を
《PMS(月経前症候群)》
生理前に現れる心身の不調の総称。浮腫、吹き出物、便秘、頭痛といった体の不調のほかに、イライラする、涙もろくなるなどメンタルの不調も引き起こす。症状には個人差があるが、生理が始まると楽になること、ホルモン検査では特に異常が認められないことが特徴。女性の4人中3人が感じているとされる。
《子宮内膜症》
本来ならば子宮の内側にあるべき子宮内膜組織が、骨盤内や腹膜、卵巣といった子宮外にできる疾患。重い生理痛や下腹部痛を引き起こすほか、排便痛や性交痛があることも。卵巣にできたものは「チョコレートのう胞」と呼ばれ、不妊の原因にもなり得る。発症ピークは30代前半。閉経後はがん化することもある。
《子宮筋腫》
子宮の筋層にできる良性腫瘍。30歳以上の日本人女性の3~4人に1人が持っているとされる。日常生活に支障がなければ、経過観察が一般的。女性ホルモンが減少する閉経以降は自然と縮小することも。ただし、出血量が多くて日常生活に支障をきたす場合など、内服薬での治療も一般的。妊娠や出産の妨げとなることもあり、不妊の原因と考えられる場合は手術で取り除くこともある。
《不妊症》
男女が避妊せずに1年間、性交を行っているにもかかわらず、妊娠に至らない状態をさす。原因は女性側、男性側、または双方の場合や明確に特定できないことも多い。女性起因は排卵障害や卵管因子、加齢による卵子の数や質の低下など。適切な治療で妊娠率を高めることもできる。
