Text=AI TOMITA Photography=KOHEI KOMATSU

すぐそこの自然へ。[すぐそこの自然へ。]

おでかけ

 自然のスポットを楽しむことを表す「#自然界隈」というワードがトレンドにもなるように、植物や水辺に癒やされたい、そう願っている人は多いのでは。そこでメトロポリターナでは、都市開発の一環で豊かな緑が取り入れられた都心の施設や、自然散策ができる公園や緑道、ハイキング気分が味わえる高台を紹介。東京にも、自然に触れられるスポットが、すぐそこにあるのだ。


オフィス街にひらかれた
緑の空間。

 自然のなかで過ごす時間がほしい。けれど遠出をするほどの余裕はないし、装備を整えて山に入る気力もない。そんなときに求めているのは、もっと軽やかで、日常の延長にある自然だ。

 高輪ゲートウェイ駅に直結している商業施設〈ニュウマン高輪〉。2025年に開業し、その高層階に設けられた空中庭園「LUFTBAUM」(ルフトバウム)は、建築と植物がゆるやかに重なり合う空間だ。

 エレベーターを降りると、まず光の質が変わる。外の直線的な光とは打って変わり、やわらかな光のなかで、葉の輪郭が淡くにじむ。整然としすぎない配置も心地よい。手入れの行き届いた緑は、観賞のためだけにあるのではなく、こちらに語りかけてくるような不思議なぬくもりがある。

 ベンチに腰を下ろし、しばらく植物を眺める。芽吹いたばかりの葉のやさしい緑、少しずつ厚みを増していく葉脈の陰影。人の手によって配置されているはずなのに、それぞれの植物が自分の時間で生きている。その静かな自律性に触れると、こちらもまた無理に何かをしようとしなくていいのだと思えてくる。


呼吸をするための余白。

 印象的なのは、植物の「距離」だ。視界を埋め尽くすように過剰に配置されているわけではない。それぞれの植物が、呼吸するための余白を持ちながら、同じ空間に点在している。だからこそ、ひとつひとつの葉のかたちや質感に、自然と目が向く。艶のある葉は光をやわらかく反射し、マットな葉は光を受け止める。葉脈の走り方、わずかな反り、枝の伸び方。そうした細部の差異が、静かに空間のリズムをつくっている。

 例えば、観賞用としても親しまれている樹種のひとつ、シェフレラ。形や枝ぶりの異なる個体が並び、それぞれの表情を見せながら空間に時間の厚みを与えている。どれも過度に演出されていないことが印象的で、植物本来の姿を尊重していることが伝わってくる。

 鬱蒼と生い茂る木々のなかにも確かな余白があり、植物の呼吸が空間にひろがってゆくのを感じる。行き交う人びとの気配と、緑と土の静けさ。そのあわいに身を置くことで、都市と自然の境界が曖昧になっていく。ここでは、どちらか一方に寄る必要がないのだ。


都市の間で育つもの。

 〈LUFTBAUM〉の魅力のひとつは、現在の「完成された自然」だけではなく、「変化していく風景」にあるのかもしれない。いま私の目の前にある樹形も、数年後、数十年後にはかたちを変え、やがてこの場所の空気そのものを変えていく。その過程に立ち会えること自体が、都市では貴重な体験だ。

 ベンチに腰を下ろし、葉が揺れるのをぼんやりと眺めていると、思考の輪郭がゆるみ、身体の奥にたまっていた緊張がほどけていく。遠くの森に来たわけではない。それでも確かに、自然のなかにいるときと同じ種類の安らぎが、ここにはある。

 植物は、言葉をもたないまま、環境に応じて姿を変えていく。光を目指して葉を伸ばし、水分の量に応じて呼吸を調整する。そのしなやかな適応のあり方は、人の暮らしにもどこか重なる。忙しない日々を生きながらも、小さな余白を見つけることで、呼吸は整えられるのだと教えてくれる。

 外に出ると、再び都市の輪郭が立ち上がってきた。それでも、先ほどまで感じていた柔らかな時間は、身体のどこかに残っている。遠くへ行かなくてもいい。特別な準備をしなくてもいい。自然は、もっと身近なところに存在している。そのことを、「LUFT BAUM」は静かに教えてくれる。

 高輪ゲートウェイの新しい風景のなかで、植物は確かに根を張り、風を呼び込み、都市に余白をつくっている。ここは、どこか遠くの自然ではない。日常のすぐそばにある、もうひとつの居場所なのだ。

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やわらかな光を受けて咲く花々。東京のオフィス街にも、季節は静かに息づいている。

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開発の進む高輪ゲートウェイ駅。隈研吾設計の駅舎と周辺の高層建築が、新たな都市の風景を形づくる。

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「LUFTBAUM」のある28階でまず迎えてくれるのは、壁一面に植物が敷き詰められた〈深碧の間〉。人の立ち入れない深い森を思わせる空間が訪れる人びとを圧倒する。

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緑に包まれながら回廊を歩く人びと。都市の只中にいながら、木々の間を抜ける光と風に触れ、自然とすれ違うひとときがゆるやかに流れていく。

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どこか和の気配が漂う中庭に、大きな窓から光が差し込む。木々と砂利が織りなす静けさのなかで、都市の時間がゆるやかにほどけていく。

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森に迷い込んだかのように人と植物が共生する〈金糸雀の庵〉。木挽き職人が丸太を切り出したベンチや、沖縄や八丈島で育まれた木々が生命感を放つ。

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都心上空約150mに位置する〈翠の庭〉。2層吹き抜けで、枝垂桜や紫陽花、イロハモミジなど、日本の四季を感じさせる植物が広がり、晴れた日には富士山を望むことができる。


ニュウマン高輪
「LUFTBAUM」

地上約150mの高層階に、日本各地の職人が生育した一点物をはじめとする500本以上の大規模植物が育つ。28、29階にはルミネ直営のオールデイダイニング「The Public Place」ほか、眺望、植物、音響のコラボが生み出す特別な空間で楽しめるレストランが点在。季節を感じられる“都心の別荘”として、五感を刺激する特別な体験を提供する。

住|東京都港区高輪2-21-1 THE LINKPILLAR1 NORTH 28・29F
営(エリア開放時間)|8:00~24:00



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