地震や台風、豪雨など、さまざまな災害が起こりうる日本で暮らす私たちにとって、「もしも」に備えることは、これからの暮らしを考えることでもある。とはいえ、防災と聞くと、何から始めればいいのかわからない人も多いのでは。そこで今回は、防災対策のエキスパートである国崎信江さんに聞いた災害への備えから、企業の取り組み、一般の人たちの防災アイデアやグッズをご紹介。防災月間でもある9月。身近な「もしも」をきっかけに、改めて災害への備えを考えてみませんか。
国崎信江さんにきいた
防災対策は、なぜ必要?
「もしも」の備えの大切さを、20年にわたり防災・防犯等の対策を提唱している、危機管理アドバイザーの国崎信江さんにインタビュー。
災害は今この瞬間起こるかも
命や生活を守るのは自分自身
自然災害のニュースを見るたび、その恐ろしさを感じながらも、どこかで自分は大丈夫だろうとは思っていないだろうか。しかし、災害はすぐそこにあるものだ。
「地球温暖化の影響もあって、気象災害が頻発化、それに一つひとつの災害が巨大化しています」
特に近年、都市部での水害が増加。8月に起きた千葉豪雨は、県内の大半を襲い、大きな衝撃を与えた。
「ゲリラ豪雨は、全国各地で本当に頻繁に起きるようになりました。さらに梅雨前線や秋雨前線も活発になり、夏は台風もあります。まとまった雨が降る時期は多いんです。そうしたなかで、特に近年は都市部での内水氾濫が相次いでいます」
内水氾濫とは、雨水を排水施設で処理しきれずに道路や宅地にあふれるもの。線状降水帯が発生するたびにSNSでは、冠水した道路や噴き上がるマンホールの様子が話題になっている。
「都市部は、雨が地面に染み込みません。雨水がそのまま側溝に流れ込んで、下水道を通って川に向かいます。その処理が間に合わなかったり、川の水位が排水口より高くなると、今度は逆流するんですね。そのため、都市部のほうが起こりやすいんです。これは外から浸水してくるだけでなく、お風呂や台所から水が逆流して、家の中でも起こります。4階まで上がってきた例もあります」
地面が土であれば、雨水を吸収する。しかし、都市では道路がすべてアスファルトに覆われているため、その猶予がないのだ。そこで、まず知っておくべきは、下水道についてだ。
「都市部の下水道の排水能力は、概ね1時間雨量50㎜。それ以上の雨が降れば、道路は冠水します。もうひとつ、その下水道が『合流』か『分流』かも重要です。合流は雨水も生活排水も同じ下水道管で流します。分流はそれぞれ別々になっています。そして、問題は合流の場合、溢れる水は、汚水が含まれていることです。そのため、浸水や冠水する前に避難することを勧めます。もし、その水に触れてしまった場合は、なるべく早く洗い流して、清潔にしてください」
高確率で起きる首都直下地震
自宅も外出時も備えを
水害以外で気になるのは、地震だ。7月の熊本地震だけでなく、被害は少なかったが8月23日には茨城県を震源とした地震が起き、関東一円で大きな揺れが起きた。
「首都直下地震の発生確率は今後30年間で70%。これまでにない被害が予測されています。ハザードマップや避難経路の確認、食料の備蓄など、基本的な地震対策は必須です。今回の熊本地震でも、家具の転倒などによる被害がありました。過去に被災した地域でも、時間が経つと防災対策が十分に行き届かなくなることがあります。家具の固定や配置など、改めて身の回りの対策を見直してほしいですね」
また、家庭だけでなく、外での防災意識も必要だ。
「特に怖いと思うのは、エレベーターの閉じ込めです。大地震があった場合、保守点検がすぐ来るとは限りません。彼らも被災者ですし、復旧の優先順位もありますから。そう考えると何日も閉じ込められる可能性は高い。常に防災ポーチを所持するのがベストですが、飴玉や飲み物、モバイルバッテリーや携帯トイレなど何かしら持って出かけるほうがいいでしょう」
また、地震直後にも気になる行動があるという。
「地震が起きると、なぜか帰宅困難者は駅に向かいがち。震度5強だと電車は止まります。いつ動くかわからない電車を待つより、早く一時避難所などで、安全を確保したいですね」
冒頭で国崎さんは「災害は頻発化、巨大化している」と話したが、こう警告する。
「水害に対して貯水槽を設けたり、国や自治体は自然災害への対策を進めています。ただそれが来年劇的に改善されるようなことはありません。これからを生きる私たちは、一人ひとりが災害の備えを確実に行う必要があると思います」


自宅でも外出先でも。
国崎さんの防災アイデア
どれほど防災対策をしていても、いざ災害に遭うと普段の生活とは様変わりする。そこで国崎さんが勧めるのが、「おうちDEキャンプ」だ。電気・ガス・水道といったライフラインを止めた状態で、生活を試すイベント。食材を使いこなす工夫や、防災トイレといった防災アイテムの使い方など、実際に災害時に役立つ疑似体験となる。また、自宅に足りないものがわかるため、より防災対策が充足する。最初は数時間からでOK。特に子供のいる家庭では、遊び心を持って行うことが重要。避難生活をトレーニングしておくことで、危機感も高まる。

国崎信江 (くにさき・のぶえ)
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。阪神・淡路大震災を機に、自然災害から子供を守るための研究を始める。女性や生活者の視点から防災対策や防災教育を提唱し、その知識や重要性を広める。YouTube「国崎信江のキキカンリTV」(@TV-op2uv)では、防災、防犯、日常生活の安全対策など、すぐに役立つ知識を発信している。