凛とした冬の空気に触れると「A Case of You」が聴きたくなります。苦くて甘い愛する人の血は1ケースだって飲み干せるという狂おしいラブソング。原曲はジョニ・ミッチェルですが、ジェイムス・ブレイクがピアノをポロリポロリと弾き語るカバーも寂寥感たっぷりで秀逸なんですよ。独特の震えた声は今にも崩れ堕ちそうで、繊細に聴こえていたジョニのバージョンに“腹が決まった女子の余裕”を感じてしまうほどです。
ビッグ・シーフは、ひりひりとした痛みと、それすらも包み込む慈愛が溶け込んだ、ひだまりのようなフォーク・ミュージック。「Not」という曲は、最後まで「これじゃない!それでもない!」と全てを否定していく歌で非常に印象的でした。一見拒絶しているように思えるけれど、人って強いこだわりがなければ、こんなに感情をむき出しにできないはず。とすれば、本当は譲れない核心を探し求めている歌なのではないかと。否定のその先にある人間味に触れ、胸が熱くなった1曲です。
物憂げで甘ったるいメロディーとハーモニーが美しいフリートウッド・マック。『Rumours』はバンドにいた2組のカップルが仲違い状態のなかでつくられた奇跡の名盤です。事情を知ってから聴く名曲「Dreams」の生々しさたるや… 40年以上前の作品ですが、実は「2010年代にイギリスで最も売れたレコード」なんですって!でもなぜ?有名な俳句の先生が「実体験ほど優れた題材はな!」とおっしゃっていましたが、なるほど音楽においてもそうなのかもしれませんね。
JAMES BLAKE『James Blake : Deluxe Edition』
“ポスト・ダブステップの寵児”として注目されたジェームス・ブレイクのデビュー作。来日記念の2枚組デラックス盤にはJoni MitchellのカバーやBon Iverとのコラボ曲などを収録

BIG THIEF『Two Hands』
NYを拠点とする今注目のフォークロックバンド。「天」をテーマの前作『U.F.O.F.』と対をなす「地球、泥、その下に埋まる骨」をテーマにした作品。5/7に渋谷・WWW Xで来日公演!

FLEETWOOD MAC『Rumours』
邦題は『噂』。バンドが男女5人編成になり、ソフトロック路線に舵を切ったあとの大ヒットアルバム。私はHAIMが影響を受けたアーティストに挙げていて好きになりました

WARNER MUSIC JAPAN 2011